注意:この感想文にはネタバレが盛大に含まれてますので、知りたくなくない人は読まないでください
びわ子「みなさーん!こんにちわーーー」
おおつ「こんにちは。今日は滋賀県大津市のびわ湖ホールに来ています。ワーグナーのオペラ《さまよえるオランダ人》の公演です」
びわ子「さまようって、梅田の地下街とか?」
おおつ「そうそう、阪急三番街からハービス行くのってさまよう感じ、って、大海をさまよっていたんです!」
びわ子「で、どんな話なん?」
おおつ「嵐で避難していた船に、オランダ人の幽霊船が近づき、オランダ人が船主の娘を嫁にしようとするんです。娘はオランダ人を救済できるのは私だと思い込んでいるので、婚約は成立。でも、その娘が処女じゃないと誤解してオランダ人は去ろうとします。そして、娘が自分の身の潔白を示すため海に身を投げるんですね。それでオランダ人は救われて果てのない航海から解放されて死ぬ、という話です」
びわ子「なんで身を投げたら救われるの?よーわからんな」
おおつ「ワーグナーでは、女性が死んで主人公を救済するという筋のオペラが他にもありますよ。まあとにかく公演に行きましょう」
(3/5と3/6の2回の公演を見ました。)
びわ子「なんか怒ってるんとちゃう?」
おおつ「ちょっと叫んでいいですか?」
びわ子「いいけど?」
おおつ「夢落ちを使うなーーー!!!」
びわ子「はあ?何やねんな?」
おおつ「ぜいぜい、演出は、舵手の夢の物語という夢落ちでした。このオペラでこんな安易な結末を許すことはできません!」
びわ子「何が安易なん?」
おおつ「この物語は、オランダ人が救済されるところがミソなんですよ。救済されてどうなるかが重要なのに、これまではすべて夢だと?これで終わり?はあ???俺の2時間半を返せよ!」
びわ子「でもさ、舵の人って、早くから二人になってたやん。最初から気づけよな」
おおつ「そうなんですよ。でも、まさか夢落ちじゃないよね、と思いながら見てました。本当に夢落ちだったとわかったときは落胆して声も出ませんでしたよ」
びわ子「まあ、こんなときもあるわな。でも演出というか、舞台は悪くなかったと思うよ」
おおつ「そうですね、船の甲板を舞台上にしっかりと作り上げ、全ての物語がそこで行われる。場面の違いは背景のプロジェクション。オランダ人の幽霊船もプロジェクションでした」
びわ子「あの幽霊船は最初本物かと思ったわ」
おおつ「そして、甲板の上をたくさんの合唱の人たちが動き回ってましたが、全く弛緩することがないんですね。普通だったら、少しは動きが不自然な人が出てきてもいいのに。舞台にピーンとした緊張感がずっとありました」
びわ子「でも、だめだったんやね」
おおつ「そうですね。残念でした。まあ、二日目は夢落ちとわかっていたから、ゆっくり見られましたけどね」
びわ子「ところで、オケ、凄かったんちゃう?」
おおつ「ほんと、弦がうなるんですよ。ワーグナーはこうでないと。少しぐらい管が緩んでもいいんです。やっぱり京響はすごい。そして沼尻さんの指揮!管弦楽をあおりワーグナーの大きな世界を構築していく。沼尻さんの指揮はどんどん発展しているような気がします」
びわ子「歌手もよかったね」
おおつ「一番よかったのは一日目のオランダ人役青山さん。どっしりと重いバスがオランダ人の苦悩を目の前に見せてくれました。また、一日目のゼンダ役の橋爪さんも、苦しいところもあったけど、最後の身投げの時の声の激しさ。まぶしくて目を開けていられないほど光り輝いてました。」
びわ子「二日目はどうだったの?」
おおつ「一日目に比べると少々見劣りがしました。特にオランダ人役の人。声は出るけど一本調子で演技ももう一つで期待外れ。とはいえ全体的にはまずまずではないでしょうか」
びわ子「合唱もよかったやん」
おおつ「日本の合唱は上手いんですよ。それを再認識できました。よくもこれだけの団体が集まってくれたものです。おかげで凄い体験ができました」
びわ子「オケも合唱も舞台もいいんだけど、夢落ちってのがだめだったんやな」
おおつ「はい、いい公演だったのかもしれませんが、安易に夢落ちとせず、オランダ人の救済にしっかり向き合ってほしかった。このチームで来年からワーグナーの四部作《ニーベルングの指輪》を4年かけてやるそうですが、作品から逃げることなく、真正面からぶち当たってほしいです」
びわ子「この舞台のレベルで、がっつりしたストーリーを考えてくれたら、いい結果になるかもね」
おおつ「そうなってくれることを願ってやみません」
びわ子「じゃあ、次は、いい演出を期待して、またオペラを観に行きましょーねー」
おおつ「観に行きましょうねー、、、それにしてもなー、この公演も夢だったらよかったわ」
びわ子「そっちも夢落ちかい!」