コルンゴルド歌劇《死の都》の感想(びわ湖ホール2014年3月8,9日) |   kinuzabuの日々・・・

  kinuzabuの日々・・・

      徒然なるままに日々のこと、考えていることを書き連ねる

びわ子「みなさーん、こんにちわー」

おおつ「こんにちは。今日はびわ湖ホールでコルンゴルドの歌劇《死の都》の公演に来ています」

びわ子「コルンゴルドって誰ですか?聞いたことないんですけど」

おおつ「20世紀前半に活躍した作曲家です。神童と言われてたそうです。この《死の都》も彼が23歳の若さで書いたオペラです。第二次大戦中にアメリカに亡命し、映画音楽を作曲してたそうです。とパンフレットに書いてありました。」

びわ子「なんだ、知らないんじゃん。それで、《死の都》ってどんなオペラですか?」

おおつ「簡単に言うと、ブリュージュを舞台に、死んだ妻マリーを思うあまり、そこから抜け出せないパウルが、マリーにそっくりなマリエッタを見つける。マリエッタの中にマリーを見るが、夢の中で現れるマリエッタによって現実に戻され、妻への思いから解放されるという物語です」

びわ子「ヒッキ―がゾンビに助けられるわけですね?で、どこが都なんですか?」

おおつ「夢ですからゾンビではないと思いますけどね。で、このオペラはブリュージュという都市を舞台にしているのですが、その都市が、昔は繁栄したのに今は寂れてしまった。この都市の状況を死んだマリーを今でも慕い続けるパウルになぞらえているみたいですよ」

びわ子「住んでる町が死んだ街と言われるっていうは嫌だなあ」

おおつ「今は中世の美しい街並みが残っているとして人気のある観光都市になっているそうですよ。それでは、会場へ行きましょう」



(3月8,9日の二日の公演を観ました)



おおつ「感想はどうですか?」

びわ子「このホールの舞台の底ってどうなってんの?大穴空いてて底なし沼じゃん」

おおつ「2幕の舞台転換のことですか?」

びわ子「そう。舞台の地面が大きく空いて湯気が出てたところなんか笑っちゃいました」

おおつ「湯気じゃないと思いますが、、、確かにあれはすごかったですね。以前、東京にある新国立劇場の《トスカ》で舞台が上に大きく上がって入れ替わるのを見たことがあります。でも今回はなんかもう一つなんですよね。」

びわ子「何が?」

おおつ「それは後ほど。では公演の印象を。歌手の皆さんはどうでしたか?」

びわ子「一日目のソプラノの人がもう信じらんない!存在感有りすぎでしょ。世間知らずのか細い兄ちゃんじゃ勝てるわけないじゃん。」

おおつ「マリー/マリエッタ、一日目の砂川さんはもう最高でしたね。声は強くどこまでも美しくてぶれない。この難役をドラマティックにしっかり聴かせてくれました。演技も明るくて動きも華やかで大満足です。

一方二日目の飯田さんは、砂川さんを聴いた後ではちょっとね。迫力より声色ですかね、マリーは重くとマリエッタは軽くと歌い分けていたように感じました。

パウルは一日目の鈴木さんは若々しくまっすぐな声で好演だったと思います。一幕の砂川さんとの二重唱はなんてすばらしかった。これでもう少し声量があれば。確かに世間知らずの若者という感じでしたが、そういう役なんでよ、きっと。

二日目の山本さんはわずかなコントロールの乱れを感じましたが、声量も十分で素直にのびやかに歌ってました。代役でしたが、最後までしっかり歌ってくれましたね。」

びわ子「メイドの人はがっつり、お友達はしっかり」

おおつ「ブリギッタ、一日目の加納さんは芯が強い力強い歌でしたね。去年のフリッカを思い出しました。二日目の池田さんは神々しい声で一瞬ブリュンヒルデが現れたかと思いました。

びわ子「ブリュンヒルデってなんですか?」

おおつ「去年のびわ湖《ワルキューレ》で聴いたでしょ。

フランクは一日目の小森さんも黒田さんも深い声、どちらも手堅い。

全体的には一日目のキャストがよかったと思いました。なんといっても砂川さんのマリー/マリエッタが素晴らしかった!」

びわ子「私はか細い兄ちゃんが好き。顔もいいし」

おおつ「確かに歌も容姿も役にぴったりでした。次にオケはどうでしたか?」

びわ子「キラキラした音が多かったです。なんですかあれ?」

おおつ「チェレスタや木琴、鉄琴など打楽器がオーケストラピットを埋め尽くしてましたね。ハープも大活躍でここぞというところできまってジーンときました。

いたるところでキラキラした音が出てきて、とても幻想的でした。もちろん弦も美しく官能的なところが一杯。金管木管もここぞの迫力はしっかり出て大健闘でした。やっぱり京都市交響楽団はすごいです。」

びわ子「あれだけ音が多いと、少しぐらい間違えてもわかんないよね」

おおつ「ごほん、、、指揮はどうでした?」

びわ子「細かいことわかんないけど、かったるいと思ったところは少なかったです」

おおつ「それだけで十分な気がしますが、少し追加を。沼尻さんの指揮は、超複雑な管弦楽を十分に整理した上で、幻想的な部分は美しく、激しい部分は迫力たっぷりな音を引き出していたと感じました。
締めるわけでもなく任せるだけでもなく、うまくコントールしていた印象です。人をのせていく職人のような感じ。すばらしい!」


びわ子「ふーん、演奏はべたほめなんだ。じゃあ演出はどうなの?」

おおつ「あれはあれでよかったと思いますよ。パウルの世界を静、マリエッタの世界を動として対比でしょうか?または暗と明。一日目一幕の砂川マリエッタ登場で、ガラッと雰囲気が華やかになるなんてびっくりしました。マリエッタや2幕のダンサーたちの踊りとかは一日目の方がきりっとしていてよかったと思いました。思わず腰を振りそうになってしまいましたよ」

びわ子「はずかしいからやめてくださいね。で、2幕の穴は?」

おおつ「奈落っていうんです。パウルの家から夢の中に変わる舞台転換は大掛かりな見ものではありましたが、私にとっては時間がかかりすぎて間延びしてしまい、オケの熱演に集中できませんでした。あれなら、パウルの家が奥に引いたところで幕を下ろして、舞台が夢に入れ替わったところで幕を開けてほしかった。だから一日目は美しい間奏曲に集中できなかったんですよね。二日目で取り戻しましたが。」

びわ子「最後は曲が終わった後に家政婦が灯りを持って下がったけど」

おおつ「あの灯りはマリーの象徴じゃないでしょうか?パウルが出て行ったあとは、ブリギッタがブリュージュの街とともにマリーを守るという感じです。曲の最後の音が終わった後に会場が静まり返った中で行われた演技を見て、ジーンときて胸がいっぱいになりましたよ」

びわ子「他に不満もあったんでしょ」

おおつ「歌っているときにほかの人が全く動かないのは、最近のにぎやかな演出を楽しんでいる身としてはもの足りませんね。パントマイムだすぐらいなら、歌手に演技させてほしい。舞台装置については二幕の夢の場面をもっと幻想的にしてほしかった。古い遺跡のような街という感じで、わびしさを感じました。」

びわ子「夢だから幻想的って単純だわ。装置って新国立劇場の舞台の写真を見たからそう思ってるんじゃないの?」

おおつ「そうなんですよね、新国立劇場でも同じ時期に上演されるそうで、あちらは幻想的みたいで・・・」

びわ子「まあいいじゃん、びわ湖で観られたんだから」

おおつ「そうですね。《死の都》は日本では上演機会の少ないオペラですから。演出に多少不満はありましたが、音楽的には満足な二日間でした。芸術監督の沼尻さんとびわ湖ホールに大感謝です」

びわ子「ありがとうございました」

おおつ「最後にもう一つ。二日目のパウルを歌ったのはびわ湖ホール声楽アンサンブルの山本さん。代役でしたが代役とは思えない見事な歌でした。このアンサンブルを私も何度か聴いたのですが、レベルが高いんですよね。その中から、こんな大役を歌える人が出てきてとてもうれしかったです。身近なアンサンブルから大きく羽ばたいていく人が出てくるのを見ると感慨深いです」

びわ子「近くにいると応援したくなりますよね。話変わるんだけど、《死の都》みたいなのどっかにあったんじゃないの?ほら、木曾の山ん中とか。」

おおつ「中山道の妻籠宿や馬篭宿のことでしょうか?あそこも時代に取り残されて古い街並みが残って、今では観光地です。」

びわ子「じゃあ、観光地になりたかったら一度時代に取り残されたらいいんだ」

おおつ「自分の住んでいるところが死の街って言われたら嫌だと言ってましたよね」

びわ子「えっと、今回もいいオペラを観たから、また観に行きましょーねー」

おおつ「ははは、またオペラを観に行きましょーねー」