外貨投資詐欺(リビア・ディナール)に注意 | 弁護士法人近畿中央法律事務所のブログ

外貨投資詐欺(リビア・ディナール)に注意

外貨投資詐欺の被害事例を聞きましたので,ご報告です。

外貨投資詐欺とは,通貨価値の不安定な国等の通貨を,さも価値があるかの様に装って販売(両替)するものです。

過去には,イラクのディナール,スーダンのポンドの被害例が,国民生活センターなどから,報告されており,最近,アフガニスタン通貨についての報告もされました。

イラクディナールに関する国民生活センターのサイト
アフガニスタン通貨に関する国民生活センターのサイト

今回,聞いた被害事例は,いわゆる「劇場型」詐欺です。

「劇場型」詐欺とは,商品(通貨)を販売する会社だけでなく,その他にも色んな関係者が,さもその商品に価値があるかのような芝居をうち,被害者を騙す手口をいいます。

典型的には,一方で「こういう商品を買いませんか」という勧誘をしながら,別の人が「こういう商品を探している。高く買いたいのだが,お持ちではないだろうか」という芝居を打つのです。その言葉に騙されて,商品を買い,これを転売しようとすると,もう買うと言っていた人とは連絡がつきません。

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さて,リビアディナールですが,手口は次のようなものです。
(少しアレンジしています・また,この様な記事をかくことに被害者のご了解はいただいています)

1 被害者であるAさん(高齢者)のところに,B社から「リビアの通貨を買いませんか」「リビアの通貨価値は今後上昇していきます」というようなパンフレットが届いた。そのころ,B社から,電話勧誘もあったが,Aさんは,興味が無かったので取り合わなかった。

2 しばらくして,別のC社の者であるというDから「リビアディナールを探している」という電話があった。Aさんは,先日のパンフレットを思い出し,「こういうのがあるらしい」と話をした。Dは,「手数料を渡すから,それを買ってもらえないか」と言ってきた。Aさんは,「連絡先を教えるから,自分で買ったらいいではないか」と言ったが,「会社には販売していない。特別にパンフレットを受領した人だけが購入できる」と説明した。
 Dは,「Aさんが,リビアディナールを申し込んでくれたら,お金はこちらが用意する。振込をするときには,ガードマンもつれて一緒に銀行に行く」などと言って,Aさんを説得しようとした。

3 Aさんは,手数料などいらなかったし,煩わしいことに関わりたくなかったので断ったが,その後,しつこく何度も電話があり,日常生活に差し支えるので,Dの申し出を了解して「B社に,リビアディナールを申し込んであげる」と返答した。

4 そこで,Aさんは,B社に電話連絡をし,「Dからこういうことを言われているので,リビア・ディナールを申し込みたい」という話をした。B社の担当からは,「それでもよいが,Dが金を払わなかった場合でも,あなたが責任を取ってくださいね」と言われた。Aさんは,早くこの面倒毎から逃れたかったので,「分かった」と言って,300万円分リビア・ディナールを申し込むというFAXをB社に送った。

5 お金を送金するという日,Dから「申し訳ないが,急なことで行けなくなった」「後日支払いはするので,送金しておいて欲しい」という連絡があった。Aさんは,騙されているのかとも思ったが,B社と「Dが金を払わなくても,自分が払う」という約束をしたという気持ちがあったので,自分で金を用意して送金しようとした。
 しかし,B社から「送金先の口座は,送金の直前にしか教えられない」「送金するときに,銀行から連絡して欲しい」と言われていたので,銀行から電話しようとしたところ,そのような行動を不審に思った銀行員から質問を受け,振り込め詐欺であることが発覚した。

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B社とD(C社)との関係など,明確になっているわけではありませんが,典型的な劇場型詐欺の行動パターンです。
いくつかのことを補足します。

1 購入させる手口
 ①「高く買い取る」と言ってすぐに儲かると思わせたり,②「あなたしかできない」「助けて欲しい」など言って,「人助け」を装ったり,③しつこく何度も連絡して根負けさせたりして,投資に興味の無い人間も引きずり込みます。
 また,やはり高齢者が狙われます。インターネットで情報収集をされている方は,比較的大丈夫なのかも知れませんが,ご自身のご両親やおじいさんおばあさんのところに,このような勧誘が来ているおそれがあります。

2 振込先の口座を最後まで教えないこと
 このような詐欺業者にとっては,「銀行口座」は非常に大切なものです。金融機関には,口座を不正に使用させてはならない義務がありますから,犯罪に利用される口座であることが判明すれば,口座の凍結がなされることがあります。
 それゆえに,確実にお金が回収できる直前にしか口座を教えないものと思われます。こういう状況をみれば疑っていただいてよいと思います。

3 デノミは関係ない
 リビア・ディナールは,デノミの予定がないから大丈夫という話があったようです。「デノミ」とは,redenomination(通貨単位の変更)のことです。インフレが進んだ国で,1000円を新1円にするなどされることがあります。先日,イラクでデノミが実施される可能性があると報道があったようです。
 しかし,このデノミは,この詐欺とは関係ありません。デノミ自体は,単位が変わるだけで,もっているお金の価値が変わるわけではありません。もちろんそれだけ通貨価値が不安定であることを示す大きな材料ではありますが。
 そして,何より問題なのは,デノミがあろうとなかろうと,通貨の価値がどれだけであろうと,「その気がないにも拘わらず,一方で『買い取ります』として,物(通貨)を買わせるというこうい自体が詐欺」ということです。

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では,このような勧誘を受けた場合,実際に被害にあった場合にはどうすればよいでしょうか。

1 勧誘を受けただけの場合
 少しでも怪しい,上に述べた例に近いと思われましたら,弁護士,消費者センター,警察などに連絡して下さい。絶対にそれまで,お金を払わないで下さい。
 ただ,偽物の弁護士やセンターに繋がれないように,タウンページで調べるとか,そういうことを心がけて下さい。当事務所(担当:川本)に連絡いただいても結構です。

2 実際にお金を支払ってしまった場合
 速やかに弁護士又は消費者センターに相談下さい。お金を支払ってから,手を打つまでの時間が,回収できるかどうかの非常に大きなポイントになることが多いです。
 明らかな詐欺の場合には,「口座の凍結」を金融機関に申し入れることもできます(いわゆる「振り込め詐欺救済法」に基づく手続き)。ただ,現実的な回収は,弁護士に相談いただくことがもっとも効果的でないかと思います。
 
3 法律構成
 通貨の両替契約を解消し,金銭の返還を求める法律構成としては,民法上の詐欺,公序良俗違反として無効,消費者契約法に基づく取り消し(断定的判断の提供),特定商取引法の電話勧誘販売としてクーリング・オフなどが検討できます。 
 
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とにかく,このような勧誘を受けられた時は,絶対に送金するのではなく,弁護士や消費者センターに相談下さい。

また,このサイトを見ている方は大丈夫であっても,ご両親など高齢の方はこういう情報に接していない可能性がありますから,たまにはご実家に連絡するなどして,変な勧誘がないか聞いてあげてください。

最後に,今回は,リビア・ディナールを紹介しましたが,今後,別の通貨や,別の手法による被害が発生する可能性が高いです。うまい話,しつこい電話には十分ご注意下さい。

また,こういった被害があれば,情報提供をいただければ幸甚です。このサイトで紹介させていただきます。

(川本真聖)
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