太陽光発電の急成長で微笑むのは誰?(下) | kingbirdのブログ

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世界の太陽光発電

 最大手メーカーのインリーグリーンはモジュール販売で世界トップを誇るが、業績は2013年も赤字のまま。四半期ベースでみると実に2011年第3四半期から2014年第1四半期まで赤字が続く。日本のユーザーからもコストパフォーマンスではインリーがトップといわれるように、シェア拡大優先の姿勢に大きな変化はない。もっとも、コスト低減への取組を優先課題に据えながらも、国際市況が停滞する中で、メーカー各社ともに太陽電池販売だけで利益を確保するのは至難の業。

 このため、各社は川下分野である太陽光発電事業への取組を強化する一方、日本など高価格で販売可能な市場への供給シフトに努める。ちなみに、中国市場の急拡大を背景に、大手太陽電池メーカーのうちインリーグリーン、トリナソーラー、カナディアンソーラー、ジンコ・ソーラーが、2014年に400MWを上回る太陽光発電所開発を計画している。

 インリーグリーンは、河北省、新疆ウイグル自治区、雲南省、広西チワン族自治区と山東省など中国10省で約1GWの太陽光発電プロジェクトの承認を取得しており、内モンゴル、青海省、甘粛省および寧夏回族自治区などの地域を含む他の省でプロジェクト開発に努めてきた。2014年第1四半期には、2014年大3四半期完成予定で河北省で合計発電容量25MWの2つの地上設置型太陽光発電プロジェクトの建設を開始、6月には河北省、広西チワン族自治区、四川省でユーティリティ規模の110MWと、分散型発電プロジェクト20MWの建設を開始した。

 カナディアンソーラーは2014年1月末時点で合計約1.3GWのユーティリティ規模の太陽光発電プロジェクトの実績を持っており、これらプロジェクトは合弁事業による所有だけでなく、EPC(設計・調達・建設)サービスを提供するプロジェクト。同社は、日本でのユーティリティ規模プロジェクトが、2014年1月末時点で329MWに達しており、日本でのプロジェクト・パイプラインは2014年末までに約600MWに達する見通し。

 また、ジンコ・ソーラーは、ソーラープロジェクトからの2013年の売電収入が1,270万ドルと2012年の48倍に増加し、モジュール出荷価格の下落によるマイナス要因を相殺し、売上高粗利益率は前年の4.8%から20.3%に大幅に改善した。太陽電池製品の半分近く
を太陽電池セルが占め、他メーカーからの受託加工を含めた事業を展開するJAソーラーも、2014年には自社の下流プロジェクトとして200MWの開発を計画しており、川下事業への進出に余念がない。

 トリナソーラーは、2013年にソーラープロジェクトの初期段階の50MWを完成させ、2014年第1四半期に売却を完了した甘粛省武威市では、さらに100MWの建設を開始した。さらに、新疆ウイグル自治区トルファン地区トクスン県で、6月に90MWプロジェクトの建設を開始した。同プロジェクトは、2013年にトルファン地方政府と枠組協定を締結しており、総出力1GWの太陽光発電所を複数段階に分けて建設する。

 さらに、業績の明暗を大きく分けたのは高価格市場である日本向け供給比率。カナディアンソーラーは、2013年第4四半期の地域別売上高は、欧州市場向けが売上高全体の5.5%と前年同期の40.6%から大幅に低下する一方、米国大陸向けが前年同期の20.0%から32.1%へ拡大し、アジアその他向けは同じく39.4%から62.4%へ大幅に増加した。

 ジンコ・ソーラーは、2014年第2四半期から下期に市場拡大が予想される中国市場で主導的位置を維持すると同時に、着実に新興市場で出荷拡大に取り組んでいる。米国および日本市場ではプレゼンス強化により、総出荷量の30%を販売しており、同社の平均製品販売価格を上回る。また、新興市場の南アフリカ、チリでは最大のモジュールサプライヤーの一つとしての立場を確保している。

 レネソーラは、2013年までの2年間でポーランド、南アフリカ、インド、マレーシア、韓国、トルコなどの施設で、約1GWの海外モジュールOEM容量を持つ。モジュール出荷量割合が増加する日本のOEM戦略は、最低資本支出と同社のビジネス成長を可能にし、現実の市場動向に対応した容量拡張面で優れた柔軟性を提供する。同社の第1四半期モジュール出荷は、とくに日本向け販売が拡大しており、日本向け販売拡大は今年いっぱい続く見通し。同社は1月に、日本に拠点を置く大手太陽光発電プロジェクト開発事業者向けに、420MWの太陽光パネル供給契約締結を発表しており、300Wのヴァータス2高効率多結晶太陽電池パネルを、10カ所以上の地上設置型太陽光発電向けに供給する。

 さらに、ハンファ・ソーラーワンは日本市場で販売拡大に努め、第1四半期のモジュール出荷量全体の51%を日本向けが占め、英国市場は予定されたインセンティブの変化によりユーティリティ規模の太陽光プロジェクトの強い需要を背景に第1四半期に需要が増加し、総出荷量の22%を占めた。米国は第1四半期出荷量の8%、韓国は7%、カナダが3%を占めた。

 中国市場は、世界最大の太陽光発電市場へと成長したが、モジュールの価格水準は高くない。さらに、太陽光発電プロジェクトを開発しても、系統連係に時間がかかる。これに比べて、日本などの高価格市場での製品販売やプロジェクト開発は確実に利益を押し上げる。中国の大手太陽電池メーカーは、日本メーカーへのOEM供給、さらに日本企業との提携を通じたプロジェクト開発、さらに独自の販売ルート開発と高収益市場への足がかり強化に余念がない。日本市場におけるビジネス確立こそが、熾烈を極める太陽電池事業の現在の生き残り策とさえいえる。