国家は「有罪」をこうして創る | きなこのブログ

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・新刊『国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る』
http://www.snsi.jp/tops/kouhou

いつもは「まえがき」を載せておりますが、本書の「まえがき」(はじめに)は高橋博彦氏によるものであるため、今回は副島先生が登場する対談部分を掲載します。

(転載はじめ)
[対談第一部の冒頭部分]

●植草一秀「収監」の日
副島 植草さん、私はあなたが刑務所(東京拘置所)に入る日のことを、今でもはっきりと覚えています。今から3年前の8月3日です。うだるように暑い日でした。あの日、植草さんのご家族や弁護団の方々と昼食をご一緒しましたね。中華料理店でお別れの円卓を囲みました。

そのあと、あなたは東京高等検察庁に出頭した。だから、あの食事は「最後の晩餐(ばんさん)」のようでした。お昼だから「晩餐」ではなくて「最後の午餐(ごさん)」と言うべきかもしれませんが。

 あなたは、たった一人で霞が関の検察庁ビル(庁舎)に入って行きました。それを私たちは見送った。ご家族の中には嗚咽(おえつ)を漏(も)らす方もいました。が、あなたは微笑みさえ浮かべ、ボストンバッグ一つで、まるでちょっと旅行にでも行くかのように庁舎のエレベーターに向かった。

無念という言葉では表現しきれない思いであったはずなのに、淡々としていた姿が印象的です。

この本は、2006年12月6日の第1回公判から、2007年10月16日の第12回公判まで、あなたが闘った「京急事件」(2006年9月)の裁判記録を、あらためて検証するものです。

裁判をずっと傍聴して、記録しつづけた高橋博彦さんの執念の結晶と言っていいでしょう。公判の模様をつぶさに見てゆくことで、植草さんがいかに痴漢冤罪(ちかんえんざい)の謀略に陥(おとしい)れられたかがよく分かる。そしてまた、植草一秀を罠(わな)にかけた者たちが、今もなお、今の今でも、生き延びていることに私は気づきました。

これらのことは、順に追ってお話ししてゆきたいと思います。その前に植草さん、まずあなたの近況からお聞かせください。

植草 活動の拠点を東京から移しましたが、基本的なスタンスは変わっておりません。2005年に設立した「スリーネーションズリサーチ株式会社」を母体として、会員制の市場分析レポートを発行するかたわら、著作の執筆などにいそしむ毎日です。ブログ「植草一秀の『知られざる真実』」(http://uekusak.cocolog-nifty.com/ )の発信も続けています。

収監される直前(2009年6月)、副島さんとの対談を『売国者たちの末路』という一冊の書籍にまとめて出版することができました。その反響が大きかったからでしょう、複数の出版社から原稿の依頼をいただき、刑期を終えたのち、現在まで3冊の本を上梓(じょうし)しました。『日本の独立』(2010年12月、飛鳥新社)、『日本の再生』(2011年11月、青志社)、『消費増税亡国論』(2012年4月、飛鳥新社)です。

副島 ご著書はいずれも力作で、読者の評判も非常に高いようですね。植草さんは変わらず優れた文章を発表しつづけておられる。よかった。

ところで、私たちの対談本である『売国者たちの末路』が全国の主要書店に並んだのは、2009年の6月22日でした。そのわずか3日後、6月25日付で最高裁は植草さんの上告を棄却したのです。これは実に奇妙なタイミングです。確認すると、植草さんは2007年10月16日に一審の東京地裁で懲役4カ月の実刑判決を下された。

植草 はい、そうです。そして即日、東京高裁に控訴しましたが、この控訴は翌年の2008年4月16日に棄却されます。それから上告審に移し、副島さんがおっしゃるように、2009年6月25日付で上告棄却の決定が下されました。言語道断の不当判決です。この最高裁が判決を出したタイミングには、私も疑問を持たざるを得ません。

それは『売国者たちの末路』が世に出た直後ということもありますが、2009年の6月と言えば、自民党の麻生太郎(あそうたろう)政権が末期症状を呈し、鳩山由紀夫(はとやまゆきお)氏率いる民主党(当時)に国民の期待が高まっていた時期です。

私はブログなどで公然と「民主党への政権交代」を唱えていましたから、この時期での上告棄却、そして収監は、私の活動を大きく制約することになる。現実に「刑務所に入れるのは植草一秀の口封じではないか」とおっしゃる人たちも数多くいました。

 麻生政権が7月21日に衆議院を解散し、8月30日の総選挙で民主党が圧勝したことはご存じのとおりです。その選挙当日、私は小菅の東京拘置所にいたわけです。

副島 なるほど、日本の公職選挙法は「禁固(きんこ)以上の刑(禁固、懲役、死刑)に処せられた者は(その刑の執行が終わるまで)選挙権と被選挙権を有しない」と定めています。植草さんは投票ができない。手も足も出ない。あなたの心中は察するに余りある。

[対談第二部の冒頭部分]

●橋下徹大阪市長の背後に、「あの男」が控えていた
副島 この対談の最初のほうで、私は「植草一秀を罠にかけた者たちが、今もなお生き延びていることに気づいた」と申し上げました。これから、その話をしましょう。

 植草さんと私で3年前に『売国者たちの末路』を出したとき、時代の風向きは明らかに変わりつつありました。2001年から2006年まで、5年半も政権を握った小泉・竹中一派の力が、2009年には急激に削(そ)がれていった。それは彼らの後ろ盾であるアメリカが、サブプライム・ローン崩れ(2007年8月17日)とリーマン・ショック(2008年9月15日)で自業自得の金融危機に見舞われて、瀕死の状態に陥(おちい)ったからです。

アメリカの衰退(フオールダウン)とともに、アメリカの手先たち(売国奴)は末路を迎える、と私たちは断言した。だからタイトルが『売国者たちの末路』だったのです。本の帯にも「流れは、変わった!」と大きく打ちました。

 ところが、あのとき、まさに変わろうとしていた時代の流れの動きは、今や押し戻されてしまったようです。私にはそう見える。言い方を変えれば、“別の流れ”ができつつある。

植草 副島さんが言わんとしている「別の流れ」とは、橋下徹(はしもととおる)大阪市長を担(かつ)ぐ勢力のことでしょう。関西の財界を中心に、橋下氏を支えるネットワークが形成され、橋下氏率いる「大阪維新の会」に既存の政治勢力が結集している。そして、その背後に、あの竹中平蔵氏とアメリカがいる。

副島 そこです。あなたを二度までも“殺した”首魁(しゅかい)たちが、目下の台風の目と言える橋下徹の裏に控えている。

植草 副島さんのお弟子さんで、副島国家戦略研究所(SNSI:エスエヌエスアイ、Soejima National Strategy Institute)の中田安彦(なかたやすひこ)研究員が、すばらしいレポートを発表なさっていましたね。今年の4月3日に、副島さんのホームページ「副島隆彦の学問道場」(http://www.snsi.jp/ )にアップされた論文です。

副島 私と違って穏やかな(笑)文章でしょう。彼は優秀な研究員です。『日本再占領』(2011年8月、成甲書房)など、すでに単独での著書も出しています。

植草 その中田さんのレポートから、冒頭の重要な部分を抜粋してみましょう。

(引用はじめ)

橋下首相を誕生させようと目論む、関西財界ネットワークの正体とは
 橋下徹という人を私はほとんど去年まで注目して来なかった。しかし、重要なのは、橋下徹が、大阪府知事に選ばれた後の2009年に彼が世界経済フォーラム(ダボス会議)のヤング・グローバル・リーダー(Young Global Leaders)の一人に選ばれているということである。

橋下という人は、2008年の2月に大阪府知事になるまでは、弁護士とタレントの二足のわらじを履(は)いた文化人に過ぎなかった。それが、大阪府知事になるや、翌年にはダボス会議のヤング・グローバル・リーダーに選ばれている。

 ダボス会議の理事の一人はあの竹中平蔵が務めている。それから、竹中は人材派遣会社のパソナの役員であり、今は取締役会議長(会長)である。竹中が会長になる前のことだが、2008年1月、つまり府知事選の直前に橋下を支える財界人として、パソナ社長(註・パソナの創業社長で、現在はパソナグループ代表兼社長)の南部靖之(なんぶやすゆき)が、文化人の堺屋太一(さかいやたいち)や、JR西日本の井出正敬(いでまさたか)らと一緒に橋下を支援する「勝手連」を作っている。

(引用おわり:「副島隆彦の学問道場」広報ページ/中田安彦 2012年4月3日) 

植草 中田さんはこのような書き出しで、ダボス会議を媒介とした橋下氏と竹中氏のネットワークを明らかにしました。言うまでもなくダボス会議とは、世界経済フォーラム(WEF World Economic Forum)が主催する年1回の年次総会のことで、全世界から政財官界、学界、はては宗教界の代表者が一堂に会する指導者層たちによる会議です。日本の総理大臣は必ずと言っていいほど出席を切望します。

その中で「ヤング・グローバル・リーダー」とは、世界経済フォーラムが「専門分野における業績や社会へのコミットメント、および世界の未来創造の寄与しうる人材として広く知られた前途有望な若きリーダー」を選出する(世界経済フォーラムのウェブサイトから http://www.weforum.org/ )というものです。

(転載おわり)