城村優歌Webooks

       


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「ねえ、ミヤの部屋なんか寒くない?」

翌朝、目を覚ました亜子が、身震いをする。

7月も間近という季節に、身震いなんて。

「私はあんまり感じなかったけど……」

梅雨明けはまだだが、ロンT1枚でも過ごせる季節だ。

ベッドを亜子に譲り、私は床に布団を敷いて寝たのだが、さすがに朝は冷えたのだろうか。

 

その流れで、日曜はスパに行くことになった。

「内側から女を磨けとか人に言いながら、お手軽なんだから」

所詮こんなもの、と笑い合いながら体を温める。

こんなふうに裸の付き合いができるのは、亜子しかいない。

大学からの付き合いだが、何を話しても、ひっかかるところがないのは、亜子だけだった。

だからこそ、突然泊まりに来ても、当然のように受け入れられるし、恋の話も包み隠さずにできる。

 

「じゃあさぁ、今度、会社の同期と一緒に飲まない? 紹介するよ」

失恋には男薬、と言う亜子の申し出を、私は苦笑で断る。

しばらく恋愛はしないつもり、と言うと、亜子は「無理、無理」と笑った。

 

 

月刊誌の休息は、つかの間だ。

週が明ければ、新しい台割ができていて、取材はすでに始まっている。

台割というのは、何ページにどんな記事を載せるかを記載したもので、次号の目次の役割も兼ねる。

「ミヤ、お前、今月から映画評書け」

出社するなり、編集長がディスクを6枚、資料と一緒に渡してくる。

「いいんですか?」

「次から、お前の担当にする。

できるな。書き方は、わかってるだろ」

「やります。やらせてください」

外注の原稿料を抑えるためだろうとは思ったが、筆を任されるのは嬉しいものだ。

出社している間は他の雑用があるので、映画評は自宅に持ち帰る。

時給と別に原稿料が出るとは思えないが、そうでもしないと映画を観る時間も、書く時間もなかった。

 

仕事に追われていれば、恋愛を始める余裕はない。

小さな出版社の、しがないバイトだ。

取材の助手、原稿の校正、使いっ走りから電話番まで、ひとりでこなさなくてはいけない。

たまに、他の編集部のアルバイトとトイレで顔を合わせると、

「今度、ごはん食べに行きましょうよ」

と誘われるが、今まで行けたためしがない。

 

そのうちに7月に入り、お盆進行が佳境を迎えると、編集部は殺気立つ。

お盆は印刷所が休みになるため、その分の作業を前倒しにしなくてはいけない。

そのため、台割は2号分作られ、次号、次々号の取材をこなしていく。

雑事も倍以上になり、そのまま仕事に追われ、全く色気のない日々ばかりが過ぎていった。

 

 

8月になると、世の中全体が暑さにうだるように、編集部内にも停滞感が満ちる。

殺気だったお盆進行も一段落し、校了待ちという時、私は次々号の特集の助手で、南青山にある取材先に向かった。

コンクリート打ちっぱなしの、一見、小洒落た一軒家のように見えるその撮影スタジオは、以前にも何度か取材で入ったことがある。

地下に広いホリゾントがあり、地下鉄の駅からも近く、便利なためか、よく撮影に使われる。

アスファルトに染み込むような蝉の鳴き声を背に、重い鉄製のドアを開けて入っていくと、ひやりとした空気に包まれた。

内装も無機質なコンクリートの打ちっぱなしで、所々に小さな抽象画がかけられているだけ。

受付に名前を記入しスタジオに通じる階段を降りていくと、今回取材するデビューしたての若手俳優たちは、まだ到着していないようだった。

担当編集者の安西さんは、スタジオに荷物を置くと、早速撮影とインタビューの準備を始める。

その手伝いをしていると、階上から数人の靴音が響いてきた。

 

「おはようごさいます」

低く美しい胸声がふたつ、スタジオの壁に反響する。

姿勢のいい長身の男性がふたり。今日取材する相手だ。

準備の手を止めて、こちらも姿勢を正し挨拶をしようとした時、私は息を飲んだ。

「ガクちゃん!」

 

「なに、知り合い?」

もうひとりの俳優が彼を肘でつつく。

彼は私を見て、くしゃりと笑い、「ミヤちゃん」と呼んだ。

 

愛嬌のある穏やかな声。

変わってない、と思うと嬉しくなった。

でもそれは一瞬。

「今日はよろしくお願いします」

気持ちはすぐに切り替わり、お互い仕事の顔に戻る。

 

マネージャと名刺交換をし、取材内容と撮影の段取りの説明をしている間も、私は彼の視線を気にしていた。

最後に会ったのは、大学3年の冬だ。

あの頃の彼はバンド活動に一生懸命だった。

俳優になりたいという話は、聞いたことがなかった。

あれから約1年半の間、連絡もなく、もう会うこともないと思っていたのに……。

 

 

 

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お読みくださりありがとうございます。

また長々と間が空いてしまいました(滝汗)。

なかなかPCに向き合う時間が取れず、

どうしても小説は携帯で書けない(自分に向いてない気がする)ので、

まとまった時間が取れる時に、少しずつ書き溜めているのですが、

こんな調子です。

どうかご容赦ください。

 

実は、ウチで猫を飼おうという話が持ち上がっておりまして。

ほんとは今日トライアルの予定でした。

保護された4か月の仔猫ちゃんで、エントランスで鳴いていたので、

エントちゃんと名付けられたそうです。

捨てられてた時に、色々と病気を持っていたらしく、

健康診断をしたら、まだ完治していないものがあったので、

ペンディングになってしまいました。

なのに、私ってば、早々と3段ケージやふかふかベッドまで買いそろえてしまって(笑)。

来週の水曜日、ねこちゃんの体調が良かったら、ウチに来る予定です。

また写真撮って、お披露目しますね。

トライアル中の猫の様子で、飼うことがダメになることもあるそうなので、

無事に飼えるようにと、毎日心の中で祈っています。

 

先代猫は、大きくなってから拾ったのですが、

いたずらもせず、大人しく、しつけのいい、お悧巧さんだったので、

病気になった時以外、手がかからなかったのですが、

今度はどうかなぁ~。

 

そんなわけで、猫待ち週間を過ごしております。

明日から12月並みの気温だそうです。

お体にお気をつけて、おすごしください。

 

それではまた~^^

 

 

 

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