この駅で君と待ち合わせて | 三茶農園/きむらさとる

三茶農園/きむらさとる

 気付きの共有。コミュニケーション、演出表現について、まちづくり。渋谷とか静岡。

携帯電話が発明されて メールが発明されて 人間たちは
携帯電話の鳴らない メールの着信しない さみしさ を
発明してしまったんだね すこしまえ 留守番電話が発明
されて 用件のない日の さみしさ が発明されたように
郵便さえ 手紙の届かない さみしさ の発明だったかも
しれない だから むかしがよかった というのではなく
こうして この駅で君と待ち合わせて いることが 僕は
好きだ それはきっと 変わらない 誰だって こうして
現れるひとを待つことは 現れるひとのいることは ただ
むかしなら 10分でも20分でもへいきだった いまは
携帯電話のつながらない 心配 も 発明されてしまった
から どうしたのかな まだ電車のなか なのだろう と
思いつつ 待っている 変わらない たとえ何が発明され
たって もうすぐ 現れる君を待っている この人ごみに
君を探す リアルな時間が 僕は好きだ ちょっと遅れて
ちょっと心配して でも現れる きっとすぐに駆けてくる
その確かさが 手をのばせば さわれる君の 手をとって
あるきだす あれこれ迷う 君の買いもの 君の気にいる
そのシャツの そのてざわりや えりのかたち そういう
ことの ひとつひとつが かけがえのない 消去されない
まいにちになる 目の前にある てざわりのある 時間の
ひとこまひとこまが 誰だって 欲しいんだ ほんとうは
だから こうして この駅で(...それにしても 遅いな)
東京FM Tokkyo Copywriters' Street 7月4日放送分より。