知財弁護士の本棚

企業法務を専門とする弁護士です(登録22年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

info@kimuralaw.jp   牛鳴坂法律事務所 弁護士 木村耕太郎


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 私のように特許法の実務ばかりやっていると、行政法を知らなくてもほとんど困ることはないのだが、本当は行政法と特許法の関係も理解している必要がある。


 行政庁の処分に対する不服申立ては、処分をした行政庁(「処分庁」)以外の行政庁(上級庁等)に対して行う「審査請求」と、処分庁に対して行う「異議申立て」がある(行政不服審査法3条2項)。


 特許法では、処分の主体は「審査官」「審判官」「審判長」「特許庁長官」と様々な場合があり、「審査官」「審判官」「審判長」の処分に対して「特許庁長官」に対してするのが審査請求、「特許庁長官」の処分に対して「特許庁長官」に対してするのが「異議申立て」となる(吉藤幸朔「特許法概説」[第13版](有斐閣、1998年)658頁)。


 行政庁の処分に対して不服のある者は審査請求または異議申立てができるのが原則である(行政不服審査法4条1項本文)。ただし、「他の法律に審査請求または異議申立てをすることができない旨の定めがある処分」は、この限りでない(同項但書)。


 特許法195条の4は、「他の法律」における「審査請求または異議申立てをすることができない旨の定め」にあたる。

 「審査請求または異議申立てをすることができない」場合としては、①そもそも不服申立ができない場合、②特許法で特別の不服申立て手続を設けている場合、③直接、裁判所に処分取消の訴えを提起すべき場合とがある。

 

 ①として、特許法では、審判官の除斥・忌避の申立についての決定(143条3項)、参加申請についての決定(149条5項)などがある(特許庁編「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」[第18版]573頁)。


 ②は、拒絶査定(121条1項)である。


 ③として、審決(再審における審決を含む)、審判請求の却下、再審請求の却下(178条1項)がある。


 それ以外の特許法上の処分については、行政不服審査法に基づく審査請求または異議申立てが可能である。たとえば、出願等の却下(18条の2)、裁定(83条等)、証明等の請求の却下(186条)などである(ただし、実務上お目にかかることは稀である)。

 特許法195条の4は、行政不服審査法の適用を全面的に排除しているわけではないので注意を要する。



 特許法上の審決等の取消訴訟(178条)は、行政事件訴訟法上の取消訴訟(3条2項)の一種である。したがって、職権証拠調べが認められる(行政事件訴訟法24条)など、特許法に特則がない限り、行政事件訴訟法の規定が適用される。

 

 行政事件訴訟法上の取消訴訟は、行政不服審査法に基づく不服申立てを前置しなくてよいのが原則である(行政事件訴訟法8条1項本文)。ただし、「法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。」(同項但書)


 この「定め」として特許法184条の2がある。ここで言う「処分」とは、先ほどの、出願等の却下(特許法18条の2)、裁定(83条等)、証明等の請求の却下(186条)などである(逐条解説484頁)。

 

第百八十四条の二  この法律又はこの法律に基づく命令の規定による処分(第百九十五条の四に規定する処分を除く。)の取消しの訴えは、当該処分についての異議申立て又は審査請求に対する決定又は裁決を経た後でなければ、提起することができない。



 「拒絶査定」は、特許法184条の2の「第百九十五条の四に規定する処分」であるので、本条の対象外である。したがって、「拒絶査定」に対して、いきなり取消訴訟を提起することができない根拠は、本条ではない。


 特許法は、「拒絶査定」に対して審判を請求できるとは書いている(121条)が、いきなり取消訴訟を提起してはいけないという規定の仕方にはなっていない。なぜなのか、よくわからない。


 


 

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