著作権表示について | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

一部の外国では、適正な著作権表示(例えば「© 2010 KOTARO KIMURA」)を付さないで著作物を公表した場合は、当外著作物はパブリック・ドメインとなり著作権による保護を受けられなくなる(方式主義)。

現在でも、中南米の一部の国でそういう法制があるらしいが、ベルヌ条約未加盟国がすべて方式主義というわけでもないらしく、実際のところはよく分からない。


197811日(1976年に成立した現行著作権法の施行日)より前に公表された著作物について適用される旧アメリカ合衆国著作権法は、そのような法制の例である。アメリカ国外で公表された著作物についても同じなので注意を要する。



アメリカはその後ベルヌ条約に加盟したので、同条約加盟に伴う改正法の施行日である198931日以降に公表された著作物については、著作権表示の有無にかかわらず保護される。


197811日から19892月末日までに著作権表示なしで公表された著作物については、著作権法405(a)に定める条件を満たす場合に限り、当外著作物はパブリックドメインにならない。


まとめると、


1977年末までに公表された著作物は著作権表示が必要。

197811日から19892月末日までに公表された著作物は、原則として著作権表示が必要。

1989年3月1日以降に公表された著作物は著作権表示が不要。


ということになる。このことは、私が留学中にプロフェッサーから習ったことなので間違いないと思うが、日本語の文献で明確に解説したものを見たことがない。


なお「不要」というのは、「パブリックドメインにならない」というだけのことで、損害額の算定においては意味がある(著作権法401(d))ので、現在でも著作権表示はあった方がよい。


わが国の法制では、著作権表示に関する規定はまったくなく、著作物が日本国内において利用される限りにおいて、著作権表示は法律的には意味を有しない。「法律的には」と言ったのは、事実上の侵害抑止効果とか、そういうのはあるかもしれない。


 ©記号の根拠については、アメリカ合衆国著作権法401条のほか、万国著作権条約31項を参照されたい。