著作物の「使用」と「利用」 | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録28年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 著作物を「使用」すると「利用」するの意味の違いをご存知ですか。


 著作権法は、ちゃんと使い分けていますよ。


(私的使用のための複製)

第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

・・・


(引用)

第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

・・・

  

 分かりますか。著作権法で著作物を「使用」するとは、本を読む、CDを聴くといった行為を意味します。これに対して著作物を「利用」するとは、著作物を複製する、公衆送信するといった、著作権者の許諾がなければできない行為を意味します。


 ちょっとしたことなんですが、重要なポイントです。

 

 したがって著作物の「利用許諾」というのはあっても、「使用許諾」というのは、本来おかしいのですね。


 しかしソフトウェアだけは異なる慣行が確立しています。ソフトウェアのユーザー・ライセンスは、複製したり公衆送信することを許諾しているわけではないので、「利用許諾」ではなく「使用許諾」です。


 書籍の後ろに「使用許諾」約款が付いていたら変ですよね。でもソフトウェアでは、その変なことをしているわけです。まあ確立した商慣行なので、改めろとは言いませんが、法律的には、あれは「ライセンス」ではないわけです。ソフトウェアは、複製されたり公衆送信されたりといった著作権侵害行為が行われやすいので、予め釘を刺しているわけですね。