弁護士業界もデフレ? | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録28年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 余った弁護士を遊ばせておいても仕方がないと言って、大阪系の法律事務所を中心に、M&Aの契約交渉をデュー・デリジェンス(以下「DD」)込みで300万円の格安パッケージで請け負うところが出てきたとか週刊誌に書いてあった。


 本当か?


 買収額1億円くらいの小型案件なら、費用も掛けられないからDDと言っても社長を2時間くらいインタビューして終わりというのが相場だから、300万円でも成り立つかもしれない(大手事務所の人は、そういう案件は知らないでしょう。あるんですよ、そういうの)。


 しかし10億円を超えるような案件では、普通、DDルームに弁護士を5人くらい朝から夕方まで貼り付けて資料を全部チェックさせたりする。これに契約書起案、交渉、報告書作成などの時間がかかる。


 時間単価3万円の弁護士を5人、DDルームで1日8時間、3日間働かせると360万円。報告書にまとめるのに同時間かかるとして360万円。契約交渉は上の方の弁護士がやるから5万円と4万円の弁護士が各100時間働くとして900万円。トータル1620万円。

 かなり控えめに見てもこれくらいはかかると思うのだけど。要するに「300万円」は1桁安い。とてもクオリティーを保った仕事ができるとは思われない。


 一度、崩れた価格を元に戻すのはとても難しい。400円台が相場だった牛丼も、1社が一度280円にしたものだから、300円台では高いと消費者が感じるようになり、市場全体が縮小した。


 ビジネス弁護士なんだから、ビジネス感覚を持ってもらいたいのだが。