特許制度の起源 | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 特許制度の起源については諸説あり、イギリスの専売条例(Statute of Monopolies)(1624年、または1623年とする文献も)が起源であるというのが一般的な説明かと思う。


 1450年代に制度化されたヴェネツィアの制度に起源を求める説もある。新技術による新規事業を営もうとする者に国家が土地と資金を援助する制度であったらしい。


 専売条例以前のイギリスの「特許」は、もともと、ギルド的規制(この町で修業した徒弟や、ギルドの組合員でなければ開業できないといった規制)から免除することを主旨としたようだ。


 その後、ギルド規制からの免除と並行して、新規の発明に対する排他的独占権の付与も行われるようになったが、輸入に対する独占権の付与とか、いろいろ性格の異なるものがごっちゃになって各種の「特許」が乱発されるようになった。


 専売条例(Statute of Monopolies)は、「新規の発明」以外に対して国王が独占権を付与することは無効であるとするものである。しかし、ここでの特許権は、あくまで国王による恩典であった。


 アメリカの最初の特許法は1790年であるが、ここで初めて、「権利」としての特許制度が生まれた。


 フランスでは、自然権思想、ないし社会契約説の立場から特許制度が生まれ、1791年に最初の特許法が制定された。


 「発明を公開したことによる対価」としての権利としての特許制度は、アメリカとフランスあたりが起源である。ただし、フランスでは、「特許は行政府の裁量で付与されてはならない」との思想から無審査主義となり、現在にいたっている。


 アメリカの貢献は、1836年に特許庁を設立し、審査を行うという近代的な特許制度を初めて作ったことだろう。


 こうしてみると、「特許制度の起源はイギリスにある」というのは間違いではないのだが、正しいとも言えない。