職務発明規程のいろいろ | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 うちの事務所はたぶん職務発明の相当の対価請求訴訟に関しては、日本で一番経験のある事務所と思う。私自身も現在、2件やっており、事務所全体では5件くらい。もっぱら会社側を代理している。


 職務発明の対価請求訴訟というのは、特許権侵害訴訟以上に手間がかかる。よくわかっていない代理人が原告側につくと、一度に5件の特許権で請求したりするから大変なことになる。特許権が5件になると手間暇も原則5倍になるのである。


 訴訟以外の相談も多く、今週はある会社の職務発明規程の改正についてアドバイスした。内容のみならず、従業員との「協議」の仕方についてもアドバイスしている。


 職務発明規程は会社によって内容がまちまちである。


 (1)実績補償の考え方。大きく分けると、ポイント制として級を決め、1級はいくら、2級はいくらとする方式と、売上高やライセンス収入の額に応じて、一定の算式をあてはめて実績補償額を決める方式とがある。


 (2)自己実施分とライセンス収入との関係の考え方。ポイント制の会社の場合、自己実施もライセンスもポイント計算の要素にしてしまい、全部あわせて「実績補償」とする方式がある。これに対して、自己実施とライセンスとを峻別し、自己実施についてはポイント制、ライセンス収入については収入額に算式をあてはめて「ライセンス補償」額を決める方式もある。さらに、自己実施もライセンスも、算式をあてはめて補償額を決める方式もある。


 (3)特許出願しなかった発明の扱い。大きく分けると、何も規定していない会社が多いが、会社が出願しないことを決めた場合は「ノウハウ補償」を払うとしている会社もある。


 (4)外国出願への補償について。


 (5)分割出願の扱い方。


 (6)共同発明の場合の発明者間の寄与率。


 あまり細かい規定は必要ないと思うが、ある程度の規模以上のメーカーであれば、何らかの規定は必要だろう。


 でも「就業規則の作り方」といった題名の本は無数にあるが、「職務発明規程の作り方」というのは、ほとんど見たことがない。それだけ、会社の個性が表れるというところか。