三寒四温のup and downも収束の兆しを見せ、過ごしよい気候となってまいりました。いよいよ上半期、結婚シーズンの到来です。



なかには、スピーチ、余興などを拝命し、胸中穏やかならぬ日々を過ごされている方もいるやも知れぬと勝手ながら推察し、今回は、『スピーチ・マイスター』、『余興マエストロ』の名を欲しいままにしていると勘違いしている拙より、秘伝、秘法の数々を開帳したいと存じます。



余興につきましては多種多様のカスタマイズを要しますので、こちらのマンパワーの都合もあり、今回はカットします。



まず、『スピーチ』と言うのは前もって依頼されるのが常でしょう。ものの本には『しっかり準備をしておきましょう』と綴ってあるのがセオリーでありますが、何一つ準備なんてしてはいけません。我が流派は、『生(き)』、『臨場感』など、何が起こるかわからない『ライブ感覚』、これを大切にしています。


結婚する友人と共に歩んだ日々、エポックメイクなエピソードに思いを馳せる。この程度で十分です。


そして式当日。スピーチを承る人は教会、もしくは、神社仏閣から参戦するはずです。聖域に足を踏み入れた刹那、自分のスピーチの必勝を祈願して下さい。自分の幸せだけを願う。『二人の幸せ』、これは余力があればで結構です。


「(他人に祈ってもらわないと幸せになれない非力な二人など論外。己のスピーチが成功することこそ、二人の幸せに直結する)」


思いやりに溢れる人は、この類の言い訳、屁理屈を思念して己の優しさ(≒弱さ)と決別しましょう。


そして、新郎新婦入場。


新郎はスルーするとして、父親にエスコートされた新婦が神域に入ってきます。このとき大切なのが、ヴァージンロードを貞淑な表情で踏みしめる花嫁に『違和感』を覚えること。このマインドがとても重要です。


妙齢の処女は絶滅したと言われて久しい平成の世に、『婚前交渉』をしていないカポゥなど皆無。先般まで千々に乱れた性生活を過ごしていた花嫁が威風堂々(≒いけ酒酒)とヴァージンロードを歩むその姿に女性の背負いしカルマ、業を感じるくらいの心の余裕を持ちましょう。要約すると、『落ち着け』ということでしょうか。


次は披露宴です。本番ですね。


披露宴の会場、己の席に着座した時から、『心気の充実』、この一点に集中して下さい。主賓の挨拶、乾杯の音頭など、この辺りは、『右から左へ受け流す』のがベター。


そして、食事と歓談。緊張感が弥(いや)が上にも高まってくるところですが、『腹が減っては・・・』のマインドで、なるべく目の前にある飲食物は嚥下しましょう。それに、


「スピーチ前にも関わらず、あの食欲・・・肝の太か御仁でごわす」


なんて、思わぬ賞賛を得ることもありますしね。


続きまして、スピーチ&余興の始まりです。今回は、順番が真ん中、中ほどであると仮定します。


ここで一番大切、肝心要なのは『祈り』です。『この期に及んで・・・』などと思わない。自分の順番が来るまで、ただひたすらに祈りましょう。


「(自分以外のスピーカーは全員、スベれ!)」


この文脈で思いつく限りの『呪詛の言葉』を並べて一心不乱に祈りを捧げる。と同時に、人心を捨て、『仏と会えば仏を斬り、鬼と会えば鬼を斬る』、修羅(しゅら)と化してください。


そして、『祈りなさい、さらば報われん』効果が如実に表れたところで、あなたの出番。


席を立ち、マイクスタンドのある方向に歩みを進めるあなた。背中越しにオーディエンスの熱い視線をひしと感じるはずです。『男は背中で語る』の応用、『男は背中で読む』を駆使して周囲のニーズを読み取ってください。


ちなみに僕は、『壊せ!』、『潰せ!』なるオーディエンス(≒フーリガン)の怨嗟的な要求が背中越しに伝わってくるのが常ですので、僕の場合は毎度、『新郎に嫌な汗をかいてもらう』、この一択しか選べません。無念ではありますが・・・。


もし、あなたが僕と同じニュアンスを感じたのなら、スピーチの初手で新婦の名前を、新郎の元カノの名前に置き換えて『ツカミ』を狙うのもアリかも知れません。もちろん、ここからは『自己責任』でお願いします。


今日の主役は、ひな壇の二人。円卓を囲む友人達ではありません。しかしながら、明日になれば主役の二人もただの友達に成り下がるのは必定。one of themです。この文脈を理解した上で、愚直なまでに穏やかな二人の幸せに花を添えるのか、リスクを犯して何十、何百の友人達の『賞賛』、『喝采』を狙いに行くのかは個人の価値観の問題ですから、僕は無理強いは致しません。


加えて、スピーチの具体的内容は各自アドリブで臨機応変に考えましょう。えっ?詳しく知りたい?自分の頭で考えずに何でも他人に頼ろうとする人、僕は嫌いです。己がセンスで乗り切って下さい。


続けます。


どの道を選択したのかはさておき、任務を終えたあなたは座席に戻ります。ここで決して、気を緩めないで下さい。『家に着くまでが遠足です』、あのマインド。披露宴が終わるまでスピーチは終わっていません。


あなたの次に続くスピーカーたちが全員終わるまで、『呪詛の祈り』を続けましょう。自分が『会心の出来』と悦に入っているときにそれを越えるスピーチを喰らうダメージは計り知れません。油断は禁物。


そして、無事に披露宴終了。僕の教えを守れば、あなたのスピーチは完璧だったはず。この後の二次会は思う存分楽しみましょう。


最後に僕から、ささやかなプレゼントをば。


スピーチを終えた後の二次会。『カワイイ娘』のシリを追いかけるような五流の楽しみ方をしてはいけません。二次会では、一塊になっている各グループに満遍なく顔を出すよう心掛けて下さい。


そうするとあちらの方から、


『スピーチ、素晴らしかったです』、『面白かった』


なる惜しみない賞賛の声が掛かってくるはず。


色んな人から褒めちぎってもらう。そして、謙遜の裏側でひたすら恍惚に浸る。ひとりよがりによがりまくって下さい。皆さんにはそんな嫌らしい人間になって欲しい。


これを結婚式の度に繰り返せば、自然と周囲から人は離れていきます。


僕と一緒に『孤高の男』を目指しませんか。


Fin


ダラダラとごめんなさいね。

でも、ここまで読んだなら押してお帰り。

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