516冊目 石の猿/ジェフリー・ディーヴァー | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「石の猿」ジェフリー・ディーヴァー著・・・★★★☆

不法移民は“すでに世に亡き者たち”。蛇頭に金を払わなければ、殺される。文句を言えば、殺される。この世から消えたきり、二度と見つからない。


あけましておめでとうございます

今年もボチボチと更新したいと思いますのでよろしくお願いします。


「科学捜査官リンカーン・ライム」シリーズ第4弾。

今回の事件は、中国の不法移民たちの命を狙う”ゴースト”と呼ばれる密航組織のボスとの対決。

ライムたちは中国からの密航船を上陸間際に捕まえようとするが、ゴーストは自ら船を爆破してしまう。

ゴーストは、生き残った2つの家族を探し出し殺そうとする。

ライムも同じ密航船に乗ってきた中国人刑事と共に移民たちとゴーストの居場所を追跡し追いつめるが。。。


このシリーズ作の面白さは、事件現場で集めた微細な証拠品や遺留品を分析して、犯人の所在や犯行を推理する科学的捜査と、犯人を追いつめていくスリル&サスペンスにある。

しかし、シリーズ4作目ともなるとプロットがパターン化し、少し飽きが来るかなと思いながら読み始めたが、本作は前作までとは少々趣きが異なる様に感じた。


ライムの部下であり相棒で恋人でもあるもう一人の主人公アメリア・サックスは今回はやや控えめで、代わりに中国人刑事ソニー・リーが活躍する。

今回はこのソニー・リーの存在が大きく、ライムの西洋の科学的分析に対し、ソニーは東洋思想に基づいた人間関係を重視した捜査を行い、ライムとの信頼関係を築き、他人を寄せ付けないライムにも友情が芽生えた。


本作はこのような人間ドラマ的な作風で、前作までのアクションとサスペンス色の強い展開は控えめで、ハラハラ、ドキドキ感はやや薄い。


ちなみに「石の猿」とは、石にされた孫悟空の事である。


訳者あとがきによれば次作『魔術師(イリュージョニスト)』は本作を執筆中に「どうしてもライムに解決させたい事件」として着想が浮かび刊行を早めた作品、だそうでこれまた楽しみである。


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