412冊目 ナイフ投げ師/スティーヴン・ミルハウザー | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「ナイフ投げ師」スティーヴン・ミルハウザー著・・・★★★★

 「ナイフ投げ師」...ナイフ投げ師ヘンシュが町に公演にやってきた。その技は見事なものだったが、血の「しるし」を頂くための、より危険な雰囲気が観客に重くのしかかる。
 「夜の姉妹団」...深夜、 少女たちが人目のつかない場所で、性的狂乱に満ちた集会を開いているという。その秘密結社を追いかけた、医師の驚くべき告白とは?
 「新自動人形劇場」...自動人形の魔力に取り憑かれた、名匠ハインリッヒの物語。その神業ともいうべき、驚異の人形の数々を紹介する。
 「協会の夢」...「協会」に買収された百貨店が新装開店する。店に施された素晴らしき趣向の魅力は尽きることなく、私たちを誘惑する。
 「パラダイス・パーク」...1912年に開園した伝説の遊園地を回顧する。遊園地は度肝を抜くような、過剰な施設や出し物によって大いに人気を博すが、そこには意外な結末が待っていた。
 「ミルハウザーを好きになることは、吸血鬼に噛まれることに似ている」と訳者が「あとがき」で述べるように、本書は<ミルハウザーの世界>を堪能できる、魔法のような12の短篇集だ。


私の好きな柴田元幸訳という動機で、著者の事はまるで知らずに手にしたこの短編集だったが、いやはやこんなに素晴らしい現代作家が居たとは!。。。( ̄□ ̄;)!!

出だしの表題作「ナイフ投げ師」を読みながら早くもミルハウザーの虜になってしまった。


町にナイフ投げ師が一晩限りの興行にやって来た。

華麗でスリルに満ちた技の数々に観客たちは魅了され、会場の雰囲気は徐々にナイフ投げ師に呑まれていく。

演技は次第にエスカレートし、的になったアシスタントの首筋に細い血の赤い筋をつけ、危険と恍惚な世界に入っていく。

そして、観客の中から師の「しるし」を受けたい希望者を的にし、さらに最後の演技として師は「究極の犠牲」を捧げる事を観客に要求する。。。


ミルハウザーの作品は幻想的で退廃的で奇想天外な物語を、読み応えのある精緻な文体により描き出し、あたかも現実にある様な世界を読者に提示する。

例えば「協会の夢」は百貨店の店舗運営や内装について、いろんな具体的な方策が書かれ、「パラダイス・パーク」では大人版ディズニーランドと言ってもいいような、斬新でアイデア溢れるアトラクションの数々が造られる。

これ、関係者が読んだら絶対ヒントになるね。

こんな、大人の遊園地があったら絶対当たると思うよ。


短編集という事もあり、評価を★★★★にしたが限りなく★★★★☆に近い。

★★★★☆は長編の為にとっておこう。


この12編の短編集の1つ1つは長編作品にも比肩しうる素晴らしい作品ばかりで、ヘタな長編12冊読むよりもこの短編集を1冊読めば事足りる。


読み応えのある本なんで、いつか又じっくりと再読してみたい。


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