「恥辱」J・M・クッツェー著・・・★★★★
52歳のケープタウン大学教授デヴィッド・ラウリーは、二度の離婚を経験し、以来、欲望に関してはうまく処理してきたつもりだった。だが、ひとりの教え子と関係をもった時から事態はすっかり変わった。胸高鳴る日々も束の間、その学生から告発されて辞任に追い込まれてしまったのだ。仕事も友人も失ったデヴィッドは、娘がきりもりする片田舎の農場へ転がり込む。誰からも見捨てられた彼を受け入れてくれる娘の温かさ、自立した生き方に触れることで恥辱を忘れ、粉砕されたプライドを繕おうとする。だが、ようやく取り戻したかに見えた平穏な日々を突き崩すようなある事件が…。
著者は1940年生まれ、南アフリカ出身。
2003年にノーベル文学賞を受賞。
本書はイギリスブッカー賞で初となる「マイケル・K」以来2度目の受賞作品。
読む前は作者の経歴、題名、装丁から小難しい観念的な小説を想像していたのだが、まったくそのような事は無かった。
主人公は三度のメシより女好きな、バイロン(詩人)を研究する大学教授。
ちょっと綺麗な女を見るとすぐにベットに誘い込む。
しかし、教え子にちょっかいを出し大学を追われ、田舎の農場で一人暮らししている娘の元へ転がり込むも、またもや事件に巻き込まれる。。。
ストーリーは虚飾を排したドライで硬質的な文体で綴られている。
主人公のデヴィッドは自身の主義信念を曲げずプライドが高く、他人と折り合いをつける事が苦手な男。
そんな男に降りかかる事件が男に「恥辱」をもたらす。
舞台が南アフリカという事で、アパルトヘイト、治安の悪さ、エイズの蔓延といった問題がこの作品の根底となっており、日本人の私からするとその辺の感覚の違いが本作を理解するのに温度差があるような気がする。
主人公の受けた恥辱は南アフリカの抱える恥辱ではないだろうか、、、などと思索してみる、私が。
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