248冊目 絹/アレッサンドロ・バリッコ | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「絹」アレッサンドロ・バリッコ著・・・★★★★

1861年、男は愛する妻と別れ、世界で最も美しい絹糸を吐く蚕を求めて、最果ての地、日本へ旅立つ。そしてそこで美しい謎と出会う。クールでドライな文体の奥にひそむ叙情性、ときに現れるエロティックな描写。まるで絹のようにしなやかで官能にみちた愛と幻想の物語。


作者は1958年生まれのイタリア人作家。代表作に映画化された「海の上のピアニスト」がある。


本書を読んでいると、絹(シルク)をモチーフにして外国人がイメージする日本を描いた神秘的で美しい映像が目に浮かんでくる。

必要にして充分なミニマムで叙情的な文体とストーリーが逆に読者のイメージを掻き立て、奥深さを与えている。

著者自身が日本語版によせて冒頭で語っているように歴史的現実と本書とは齟齬がある。

確かに読んでいて当時の日本人には無いような言動を感じる。

しかし、これは空想的物語でありその違和感以上にこの作品は芸術的なのだ。

複雑なプロットや細密な描写が無くても素晴らしい小説を描けるという手本のような作品でした。


絹 (白水uブックス―海外小説の誘惑)/アレッサンドロ バリッコ
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