「十二の遍歴の物語」G・ガルシア=マルケス・・・★★★★
〈バラの傷〉から流れ出る血。雪の上に続く血の跡。傷口から流れる魂―コロンビアの小さな村にこだわってきた作家が、一転して、バルセロナ、ジュネーヴ、ローマ、パリといったヨーロッパの都市を舞台に、異国の地を訪れたラテンアメリカ人の孤独を、洗練された文体で描き、そのアイデンティティを模索する幻想小説集。
マルケスの魅力はどこにあるのだろうか。そう意識しながら本書を読んでみた。
代表作「百年の孤独」もそのうちのひとつなのだが、実の所マルケスの作品を理解するというのは私にとってかなり労力がいる。
簡単ではないのだ。
本書は題名を見てもわかるよう十二の短編集であるが、そのうちいくつか読みにくいものがあった。
しかしながら、ストーリー、文章には何か魔力のように引きつけられる。
ストーリーは非日常的な悲哀や狂気、滑稽さなどを描き、文章について言えば、すごく濃密というのか注意を少しでも逸らせば何だか話が分からなくなってしまうような感じがする。
逆に捕らえればその分かりにくさが奥深く、読者自身にも分からない心の奥底に語りかけているのではないだろうか。
理解出来ないのに魅力を語るというのもおこがましいが、それが私的に感じるマルケスの魅力である。