49冊目 柔らかな頬/桐野夏生 | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

ヘタな読書も数撃ちゃ当る

ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

柔らかな頬」桐野夏生著・・・★★★★☆

ミステリーもこんな地平までたどり着いた、と言うべきか。あるいは、もはやミステリーではない、と言うべきだろうか。カスミはデザイナーの男と不倫関係にあり、家族を捨てることも考えていた。カスミが男と一緒にいる時、娘の有香が行方不明になる。彼女は罪の意識に呵まれ、娘を捜すことに人生の全てを捧げる。他方、末期がんの元刑事が1人、残り少ない人生をかけて有香を探そうとしていた……。親の愛情不足が子供を歪める、との論が最近よくメディアなどで叫ばれている。カスミはこの非難を全身で受け止め、キレてしまった。彼女こそ現代社会の被害者だ。直木賞受賞。


不覚にも涙がでそうになった。登場人物のそれぞれの人生があまりに悲しく空しい。欲しいものが目の前にありながら届きそうで届かない感じ。被害者の子(有香)がうちの娘と同名で余計にそう感じたのか?とにかく渾身の一冊である。

柔らかな頬〈上〉 (文春文庫)/桐野 夏生
¥620
Amazon.co.jp