平成29年7月11日(火)15:00〜、多摩市民館にて。

台本・演出/鄭義信
作曲・音楽監督/萩京子
美術/加藤ちか
衣裳/出川淳子
照明/増田隆芳
殺陣/國井正廣・栗原直樹
振付/吉野記代子
特殊小道具/渡辺数憲
舞台監督/久寿田義晴

出演/
茂平(人間の娘に恋したタヌキ):島田大翼
彦左衛門(茂平の育ての親):佐藤敏之
春(茂平の許婚):西田玲子

麻(茂平の想い人):小林ゆず子
絹(麻の姉):梅村博美
菊池文吾(麻と絹の父の仇、絹と恋仲):高野うるお

月之丞ほか:富山直人
星之丞ほか:北野雄一郎
船頭ほか:沖まどか

黒衣:高岡由希

ピアニスト:服部真理子

ものがたり/

あんさん、
これは
みんな一夜の
夢でっせ

「ある日、ある時、ある所。くわしいことはよう知らしません。
晴れた日に雨が降るのは狐の嫁入り、晴れた夜に雨が降るのは狸の婿入り。いや、ほんまでっせ。
その婚礼の夜にですな、一匹の狸が逃げ出したんですわ。なんでも、人になりたいとか……」

旅の一座が語る、人に化けた狸のチャンバラ活劇オペラ。斬った張ったの、上よ下よの大騒動。
渡世の波を無事、泳ぎきれるのか。それとも狸が人にだまされるのか。
嘘か真か、真か嘘か。狸の話に狐につままれるのか。それは見てのお楽しみ。
(公式ホームページ及び当日パンフより)

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3年ほど前、地元演劇鑑賞会の例会で同じ演目の上演があった。たぶん自分にとって初めてのこんにゃく座だったはずだ。

そのときの感想はこちら↓
http://ameblo.jp/kiki002-2/entry-11885363692.html

今回は、縁あってツアー前のゲネプロを拝見させていただいた。

以前の感想にも書いたように、『まげもん-MAGAIMON』というタイトルには「髷物(まげもの)=時代劇」と「まがいもの=偽物」の二重の意味があるのだろう。

タイトルだけではなく物語全体が多重構造となっているのもこの劇団らしい……などということは3年前には思わなかった。あれからけっこうこんにゃく座の舞台を拝見しているのだなぁ、と改めて思ったりする。

冒頭。

旅の一座が三味線を弾きながら登場し、客席通路で手拭いを売ったりもする。演奏し、客席と言葉を交わし、手拭いが売れるたびに声を揃える。

そんな「旅の一座が上演する芝居」として演じらるのは、人間の娘に惚れたタヌキを中心に描く、恋と仇討ちの物語。

父親の仇打ちのため、江戸で暮らす姉 お絹と妹 お麻。仇のはずの菊池文吾と恋仲になったお絹は、そのことをお麻に言い出せずにいる。

かつて罠にかかった自分を助けてくれたお麻のために、婚礼を抜け出し人に化けて奔走する茂平。育ての親の彦左衛門や許嫁のお春も加わって、にぎやかに、しかしどこか切なく物語は進んでいく。

切なく感じられたのは、茂平とお麻があどけないくらい若々しくて一途だったからかもしれない。

ぽっかり浮かんだ作り物の月がヤケに胸にしみる。

人を化かすのはタヌキじゃなく人なんじゃないのか?

気の弱い優しい菊池文吾が罠にかかって故郷を追われ、しまいには殺されてしまったりする。

破天荒なキャラクターやドタバタ気味の笑いを交えつつ、観終わってじんわりと胸に残ったのは、誰かを大切に思う気持ちが人(やタヌキ)を動かし、空回りしたりすれ違ったりもしながら、それでも幸せになりたいと願う姿だった。

『夏の夜の夢』のパックの台詞を踏まえた幕切れの座長の口上が、賑やかさの内の儚さを際だたせた。

以前拝見したときよりいっそうパワフルで、同時に優しくせつない物語となったように思えた。

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わざわざゲネプロ用の当日パンフが用意されていて、登場人物の相関図や劇団の今後の公演予定などが記載されていた。その心遣いが、とてもうれしく感じられた。

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まだ梅雨も明けない時期だったのだけれど、見上げれば夏の雲。

火曜日ということで、仕事を早退して楽しい舞台を観る。ひと足早い夏休みのようだ、と思った。