平成28年7月30日(土)19:00~、シアターサンモールにて。

作・演出/吹原幸太
音楽/西山宏幸(ブルドッキングヘッドロック)

出演/
加藤慎吾、増田赤カブト
小岩崎小恵、サイショモンドダスト★、CR岡本物語
野口オリジナル、吉田翔吾、NPO法人、渡辺裕太
横尾下下、高橋ゆき、吹原幸太
(以上、ポップンマッシュルームチキン野郎)

岡田達也(演劇集団キャラメルボックス)
大野清志(X-QUEST)
原田将司

美津乃あわ

日替わりゲスト/大神拓哉(企画演劇集団ボクラ団義)

ものがたり/
未来を予知できるシベリアンハスキーのゴルバチョフ。その能力ゆえに愛を知ろうともしない彼と一人の惨めな女の出会いが生んだ、どうあがいても幸せになれない、心温まるヒドイ話。

ダグラス・マッカーサー君が「いくら何でもデカすぎじゃね?」というコーンパイプをスースーしていた第二次大戦直後の日本。
横浜の片隅で、一匹の犬が自由気ままにも程がある暮らしをかましていた。
彼の名前は、ゴルバチョフ。
今は無き満州国に生を受け、『未来を見渡せる』能力のせいで時代に翻弄されたワケアリの男(オス)だ。

脳まで溶け出しそうなある暑い夏の日、ゴルバチョフはシヅ子と名乗る一人の女と出会う。
その出会いが彼を幸せの絶頂に導いた時、眼前に広がった未来のビジョンは、ゴルバチョフを最期の衝動へと突き動かすのだった!

ポップンマッシュルームチキン野郎が、全世界の愛犬家と別にそうでもない全ての人々に捧ぐ愛と絶望の物語。
さあ、開幕のベルは近い。
公園で首輪を外された飼い犬の如く、全てのしがらみを捨てて、劇場へ走ろうぜ。
(公式サイトより)

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馬ッ鹿じゃないの!?というフレーズを褒め言葉として使うとしたら、この劇団ほど似つかわしい人たちはいないような気がする。

馬鹿馬鹿しいことを全力で。その熱さが、観ていて本当にチャーミングだ。たとえば、開場から開演の間に開演前パフォーマンスというのを毎公演やるのだけれど、これがまず全力。本編前にこんなに気力体力使っていいのか心配になるくらい。

グッズだって、え?何これ?と思うような妙なラインナップだし。

本編だって、いろいろと「おかしいだろ!?」と言いたいことだらけだ。

未来を観ることができる犬のたどった数奇な運命と彼が出逢った一人の少女の物語なんだけど、これが、ファンタジーめいたじんわり温かいストーリー……になんかどうしたってならないのだ。

その犬 ゴルバチョフが、未来を観ることができるようになった経緯は物語の中にあるけれど、彼が人間の言葉をしゃべれるということ自体はもうそのまま受け入れるしかないし、彼の仲間となる姉御肌の女やポジティブな男などは何というか当パンでさえネタバレを控えてるくらい、いや大阪公演がこれからだから具体的には書かないけど、なんだこれ~!というキャラクターなのだ。(参考に別の作品でいうなら、ナップザックやサソリなんかも登場人物なのだ。そこから類推いただきたい。そして、ナップザックが登場人物ってどういうことだよ~的なクレームがあれば、脚本・演出の吹原氏に直接お願いしたい)

そういう馬鹿馬鹿しくも破天荒な設定やメイクやその他のあれこれと、それをときおり外から見るドライな笑いと、その底に流れるウエットな感情と。

そう、破天荒な外見から立ち上ってくる作品の骨格は、無私の愛情を描いた温かい物語だった。

もうねぇ、どうすれば面白くなるか、どうすれば盛り上がるか、どうすれば感動するか。いろんなものをてんこ盛りにした、パワフルすぎる人々の創る、奇妙な芝居だ。

そんなことを思いながら、ふと思い当たった。あの開演前パフォーマンスがあるおかげで、開演ギリギリに駆け込む観客は他の劇団より少ないんじゃないだろうか。

だとしたら、破天荒な展開や素顔なんてまったくわからないようなメイク、奇妙な登場人物なども、それぞれに理由があるのだろうか。……たとえば、芯になる物語を浮かび上がらせるための計算だったりもするのだろうか。大人げないはしゃぎっぷりに見える場面も、オトナの事情や判断の上に立つクールな作戦なのかもしれない。

そんなことを考えながら買ってきたパンフレットを読む。そして。いやいや、と思う。

……この人たち、絶対楽しんでるよ~!

いろいろ計算された理由もあることだろう。でも間違いなく、人を面白がらせることにめっちゃ情熱かけて、しかも何よりそれを楽しんでるのではないか。物販から、開演前パフォーマンス、そして、本編まで、サービス精神の塊みたいな劇団だ。

そういう中で、ラストでゴルバチョフが観た(未来の)シヅ子があまりにもキレイで涙が出そうになった。破天荒で馬鹿馬鹿しくてくだらなくて、でも、ピュアでセンチメンタルな物語。

会場に足を踏み入れたときから劇場を出るまで、充分に楽しませてもらった。

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