2011/5月


鳥が、桜の木にとまっていた。
遠くから見ると、蕾のようだった。
蕾がふっと大空に向かって飛んでいったので、おどろいた。


「これ、のどかわいたらこれを噛んでたんだ。
山菜採りに行ったときもこうやって。
すっかしとか、すっかんぼうってね」


そう言い、橋場さんはすっかしをポキリと折って口の端に突っ込んだ。
斜面の平らなところに座って、私もすっかしの繊維を噛む。
隣に座る橋場さんのケツ袋の中には、相変わらずゼンマイがたくさん収まっていた。


山の斜面から集落を見下ろして、
並んですっかしをかじる。まるでデートのようだった。