5月


かっこうが、今日から鳴き始めた。
そうか。
ようく耳をすました。
幻かと思った音は、だんだんと近付いた。
やはり。



規則正しく、空気をトンとついばむように鳴く。
確かだった1日がまどろむ、早朝と夕方に、
心の調律を正すその声の主は、姿が見えない。
だから、からっぽの空が誰かを呼んでいるようだ。
大地からにじみ始めた春を、吸い上げる声となって、
山々に響き渡る。