5月


山に囲まれた、奥の田んぼ。
むかし、基盤整備したという広い田んぼで
きょう、トラクターを使っての代掻き練習を橋場さんとした。


トラクターは意外とすんなり動いた。
橋場さんが、横で立ち乗りする。
二往復くらいすると、トラクターから降り、畦から付いてきてくれた。
どっちへ回ったらいいか分からず、
そのたびに橋場さんを見て聞いていた。

すると
「指示待ってちゃあダメだよ。
自分で考えてやるから自信になるんだよ」
と畦から声が飛んできた。

トラクターの振動は私の鼓動と重なっていた。

きぼうしゅうらく


きっと橋場さんは、
どこの田んぼで、どうやって教えようって考えて、
そしてきっと代掻きしやすいように、荒掻きまで済ませて、
もちろんこの日までに自分の仕事は全部済ませてから、
貴重な時間を使って教えてくれた。
この時期はどこの家も忙しそうだった。


ただでさえ自分の農作業で忙しいのに、
人の世話をする。
私もそうなれたらいいな、と心に刻み、
こうして橋場プレゼンツ代掻き講座は終わった。

みてくれている人がいるということが、
こんなにも心強いなんて、知らなかった。