5月


市の振興局が行っている若手向けの農業塾へ行った。
どんな若い農家がいるのだろうかと楽しみにして行ったが、
いまいち覇気のない男子達をみてガッカリして帰ってきた。


そのことを橋場さんに話した。
「自信じゃないか。
農業やってて、やっぱり他の職がきらびやかで、
おらも自信なかったよ。
でも、出稼ぎでいろんな職について、
何をやっても自信がなくちゃやれないと思った。
自信は、なくても、持つ。
だから、その若い子たちの気持ちもわかるよ」

若いころの橋場さんがいたから、
いまの橋場さんがいる。
山を下る軽トラの助手席で、橋場さんの若いころを想像する。
ハンドルを握る、皺いっぱいの丸い手からは、若い頃が想像できない。
自信、自信、と私は心に何度も刻んだ。
自信とは、誇りと少し似ている。