低次元の謀略事件ねつ造 「一進会(旺載山)」スパイ団事件 | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

すでに紹介しましたが、韓国で北のいわゆる対南工作機構だとされる労働党第225号室の「指令」を受けて、地下党を結成しようと活動しているとして、再びスパイ団事件がでっち上げられようとしています。国家情報院(国情院=安全企画部)がIT専門業体を設立し運営している金某氏を総責任者とした秘密組織、「一進会」を結成し、行く行くは地下党まで発展させるために人々を糾合したと言うのです。


すでに7月4日から6日まで金某氏他10名の自宅と職場を押収捜索しましたが,その対象は民主労働党関係者を始め民主党の前職党職者、労組幹部、統一運動団体の前会員などでした。


ところが途中で国情院は「一進会」という呼称を使わず「ワンジェサン(旺載山)」という呼称を使い出しました。捜索令状に記載されている事件名の「一進会」は是正されないままのようです。おかしな話です。令状に記載されていない呼称が捜査に使われているのです。そのため「一進会(旺載山)事件」と書かなければならなくないました。


また、7月6日には月刊誌「民族21」の主幹であるアン・ヨンミン氏とその父親であるアン・ジェグ氏(前慶北大学教授)の自宅を強制捜索しましたが、その時の口実は「一進会(旺載山)」事件とは別個だと言われていましたが、最近ではやはり「一進会(旺載山)」関連だと言うことが確認されています。


ところが「民族21」に対する容疑は「一進会」とは少し性格が違っているのです。つまり「地下党建設」ではなく、「北の指令を受けて、北の主張を宣伝煽動してきた」と言うことが主題だというのです。しかも「日本ルート」を云々しているのです。


実際、「民族21」のアン主幹とチョン編集局長が国家保安法に違反したという根拠としてあげられたのが、長い間政府の許可を得て進めてきた海外同胞(とくに在日コリアン)に対する取材活動なのです。


ところがふるっているのは「民族21」の北取材や、在日コリアン取材は皆政府の許可を受けた合法的なものであり、帰国後には報告書も提出してきたわけですから、政府は「民族21」の活動を全て承知しているはずなのです。


「民族21」は南北間で公式の契約があり、それに基づいて合法的に北の言論機関と提携を結んで記事の交換や対北取材が許された韓国唯一の民族言論誌です。つまり当局の厳しい審査(つまり国家保安法の審査)を通って、お墨付きをもらった雑誌なのです。


「民族21」は国情院のこのごり押し的でっち上げに対して4日、声明を発表していますが、それは継ぎのように極めて明快です。「南北関係の特殊性を考慮し、事前接触申告を統一部、国情院など関係機関に行っており、取材を終えて帰国した後には、事後結果報告書も誠実に提出した」としながら、「政府当局の要請があった場合には、写真コンテンツなどを提供もした」と明かしています。さらには「(国情院と統一部は)取材を終えて帰国した後、民族21の記者らを訪ねて、お疲れさんでしたと激励までしたではないか」とまで明かしています。


また声明を発表したチョン・チャンヒョン代表は「われわれは現政府以外に、金大中政府やノ・ムヒョン政府から金をもらったことなど無い」「逆に政府から民族21にコンテンツ使用量を支払ったのは李明博政府がはじめて」だとし、「そのほかに我々が北側や総連などからいかがわしい金をもらったと言うのなら、民族21全体を押収捜索せよ」と叱咤しています。


「民族21」が公開したところによれば,その間、国情院は民族21の取材陣と会ったり、写真コンテンツなどの提供を受けて来ました。つまり、「民族21」と緊密な協調関係の中で、北関連取材と交流協力事業を進めてきたのです。金大中やノ・ムヒョン政権の時にも出来なかった政府次元のコンテンツ使用料を受けたのもこうした協調・協力関係の次元で実現したと言えるでしょう。


ところが、ある日突然、「民族21」は主幹と編集局長が北に包摂され,暗躍した対南宣伝煽動の前哨基地にされてしまったのです。仮にこれが事実だとしたら、国情院は数年間もそれを背後で支援していたことになります。このちぐはぐな国情院の態度をどう言えば良いでしょうか。


ただ管理人が感じるのは、「一進会(旺載山)」事件を「民族21」まで含んだ、広範囲な事件として拡大したいのだがうまくいかず、まずは二つを分離し、後になってこれを結びつけようとしているのではないかと言うことです。ところが早くも綻びが出始めました。まず「民族21」を在日コリアンと結びつけたのが間違いです。


実際、「民族21」と接触した日本在住の人々の誰一人として、国情院の言っていることを認めることはないでしょう。なぜなら100%事実に反しているからです。在日コリアンはこの事件から、MB政権は結局、過去の朴正熙政権や全斗煥政権の亜流に過ぎない反統一、反民族、反民主の独裁政権であるということを、よりしっかりと肝に銘じることでしょう。次に「捜査」(でっちあげ)過程で公表される国情院の主張が、極めて曖昧模糊としており、言い分が猫の目のように変わりまくっていることにも綻びを見つけることが出来ます。


これについては次のブログで書こうと思います。