米民主党議員、米記者問題で高位級特使派遣を | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

国連安保理決議による米軍の、北朝鮮船舶に対する追尾が行われるなど緊張が続く中で、9人の米民主党上院議員が18日(現地時間)に、去る8日に北朝鮮当局から12年の労働教化刑を宣告された米国籍の2人の女性記者釈放のために高位級の特使派遣を求めた。国務省では検討に入っているようだ。労働教化刑を宣告された2人の女性記者はゴア元米副大統領所有の「カレントTV」の記者。北朝鮮に不法入国し、逮捕されていた。日本の北朝鮮報道に携わる報道人らにとって、教訓、もしくは警告として受け取るべき問題でもあり、当ブログではまだ扱っていなかった問題なので、北朝鮮での裁判判決の内容を掻い摘んでお知らせする。


19日、朝鮮中央通信が報道したこの事件の裁判に関する詳報によれば、この裁判は北朝鮮憲法第158条と刑事訴訟法第271条によって国家機密流出を考慮して非公開で行ったという。事件の内容については次のように指摘している。


被告らは3月17日明け方に正体不明の2人の男と、女性2人が人知れず豆満河を渡り、圖們(ツーモン)から北朝鮮側対岸に侵犯した。国境警備隊が取り調べようとした際に男性2人は逃亡し、女性2人が現場で逮捕された。
彼女らは去る1月、ロサンゼルス市で「カレントTV」放送会社のプログラム制作部監督ミッチー・コース(音読みをそのまま表記した。以下同)、プログラム制作部責任者でビット・ニューマン、会社の法律責任者ベイビット・ハリストンらと北朝鮮を中傷する記録映画を製作、放映することについて謀議した。
彼らは取材対象として、韓国で北朝鮮人権謀略策動に狂奔している政治ブローカーである「トゥリハナ宣教会」の牧師チョン・ギウォンなるものと、彼が紹介した越南逃亡者らに定めた。

3月6日、会社から9,950ドルを貰い、中国入国ビザ申請証に入国目的を一般観光とし、職業も『カレントホールディング』コンピューター専門家と嘘の申告をし、3月9日、米国を出発、3月11日に軍事境界線非武装地帯を訪れ、3月17日6時、チョン・ギウォンが紹介したガイドのキム・ソンチョルの案内を受け、中国ツーモン市のウォルチョンジンから凍った豆満河を渡り、北朝鮮側に不法入国した後、録画撮影機で周辺を撮影しながら「われわれは、たったいま許可なく北朝鮮に入国しました」との解説を録音し、侵犯記念に転がっている石を拾って見せた。

北朝鮮の中央検察所は被告らの陳述と証拠物である録画撮影機1組、録画テープ6個、コンピューター1台、石1個、写真17枚、動画像資料2件などを押収し、犯罪行為の全貌が確定したことに基づいて5月11日に起訴し、中央裁判所は6月1日、起訴事実が明らかであることから、刑事訴訟法第292条1項および第295条を適用し裁判を行うことを決定、6月4日から8日にかけて平壌裁判所で裁判が行われた。
裁判は被告らの請願と要求に基づいて彼女らが選定した通訳者をつけ、なおローラ・リンには弁護士による弁論も保障された。リ・スンウンは弁護士選定の権利を自ら放棄した
裁判で被告らは、自分たちの犯した行為が北朝鮮の人権実情を誹謗中傷する動画資料をでっち上げる政治的動機から行った犯罪行為であることを認めた。


中央裁判所は被告らに刑法第69条(朝鮮民族敵対罪=労働教化刑10年)ならびに刑法第233条(不法国境出入罪=労働教化刑4年)を適用、刑法第44条によって12年の労働教化刑を言い渡した。また、上告は出来ないとした。


なお、韓国のインターネット新聞「統一ニュース」がインタビューした、ガイドであるキム・ソンチョルの実父によれば、某教会の伝道師から電話が来て、「ソンチョルが捕まった。朝の祈祷をあげているときに鼻の高い大きな男性と一緒に服の濡れた格好で入ってきた。二人が出ようとしたところ公安が入ってきて捕まった」という。鼻の高く大きな男性と言うのは、{カレントTV}のミッチー・コースプロデューサーのこと。
また「朝の祈祷は4時30分から始まり6時に終わる」といいながら「(朝の祈祷が)終わるころだというので6時ころ捕まったようだ」と語っている。
この実父の話によれば、2人の女性記者らは、明け方の4時30分から6時の間に捕まったことになるが、北朝鮮側の調査と一致する。(http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=84542
なお米人プロデューサーは一週間後に釈放されているが、ガイドのキム・ソンチョルは未だに中国公安に逮捕されたままだ。


日本の報道関係者はこの事件を、強い警告として受け取る必要があろう。今日本のマスコミの北朝鮮報道は脱北者を金で使ったでっち上げ(TBSなどは韓国でも暴露されている)、超小型隠しカメラによる隠し撮り、身分と入国目的を偽っての入国、スパイまがいの「取材」行為など、北朝鮮の法を平気で犯しながら、常道を逸した「取材合戦」に明け暮れている。


米国籍女性らの行動も「取材」である前に犯罪である。ところがこのような犯罪が、マスコミ界では「勇気ある取材」でもあるかのように受け取られているふしが見受けられる。とくに日本では、北朝鮮関係のニュースは、真実であることの確固とした根拠がなくても平気で流される。結局国民はマスコミによるマインド・コントロールの餌食になっているようだ。