北朝鮮、「制裁」に正面突破戦略 | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

朝鮮新報ネット版を見たら、9日付け労働新聞が「帝国主義とは最後までたたかわなければならない」と題した長文の論説を載せていた。読んで見ると国連安保理の決議を見越して発表したものと思える。事実、内容はどんな決議が採択されようと、自主権を守るためのたたかいから一歩も引かないばかりか、必ず勝利すると言う、制裁に対する北朝鮮の立場、姿勢、認識が良く表れている。
独特な言い回しなので、多少の違和感があると思うが、安保理決議後の北朝鮮の行動を予測させてくれる内容なので、以下に主な部分を紹介することにする。


「いま国際舞台では、反帝自主の勢力と帝国主義勢力間の対決が熾烈に繰り広げられている。政治軍事分野だけではなく、思想文化、経済などあらゆる分野で展開されている、この激烈な対決戦の底辺には意志の力が流れている。あらゆる反帝闘争の勝敗は結局、誰の意志がより強いか、誰の意志が先に挫けるかによって決まる。その意味で帝国主義とのたたかいは意志戦だといえる」


「反帝闘争での後退は即ち敗北であり、死である。反帝闘争の道を歩む人民にはただ攻撃、攻撃、前進そして攻撃の道があるだけだ。国際情勢が複雑で、試練が重なろうとも意志戦で後ずさりしてはならない。意志戦を投げ捨てるのは結局、反帝闘争を放棄することであり、国と民族の運命を敵に委ねると言うことである。」


「現在米政府は、『変化』と『多務的協調外交』を煩く騒ぎ、耳障りの良い言葉で人々の関心を引こうとしているが、その本心は前政府と少しも変わらない。『こぶしを開くならば、われわれも手をさし伸ばそう』という、彼らの言葉は戦う人民を武装解除させ、幻想を持たせるための偽善でしかない。」


「帝国主義者は恐怖戦略を通じて、人民の意志を折りおとなしくさせ、反帝自主の原則から後退させようとしている」「帝国主義の恐怖戦略に引っかかれば、びくつき厭戦思想に浸るようになり、判断力を失い自ら白旗を掲げるようになる。勝利と敗北を分かつ分岐点は、意志のたたかいで誰が先に後退の一歩を踏み出すかというところにある。折れるよりは曲がるほうが良いと言いながら、反帝闘争で一歩でも退けば十歩、百歩を退くことになる。」


「アメリカ帝国主義は21世紀に入った今に至ってもこの戦略に執着している。彼らは最近『ハード・パワー』と『ソフト・パワー』、『スマート・パワー』などといった新たな戦略概念を使って、反帝自主勢力の諸国を圧殺する悪巧みを企てている。…これは結局『ムチ』と『人参』をかわるがわるに、あるいは同時に使いながら、反帝自主の諸国の力を弱め、抹殺しようと言うあくどい考えの発露に過ぎない。」


「いま帝国主義者らは、自主的立場を確固として守りぬくわが人民が『孤立を招いている』とか、『国際社会に挑戦している』とか言いながら、悪辣に誹謗している。これは現実を乱暴に歪曲した詭弁に過ぎない。われわれは国際法と規範の要求、諸般の国際関係秩序を徹底して尊重し、遵守しながらわが自主権を堂々と行使している。…われわれは側面支援部隊があろうとなかろうと、国際的支援があろうとなかろうと、自身が選択した自主の道を最後まで進むであろう。」


「われわれの意志戦は、敵をうっちゃりで負かすためのテクニックでもなく、一時的に危機を避けるための戦術でもない。意志戦はわれわれの根本理念から導き出される必然的な反帝闘争戦略であり、恒久的な闘争方式である。敵がわれあれの強硬な立場を『崖っぷち戦略』だと誤判し、引き続き悪辣に孤立圧殺策動にしがみ付くならば、より深刻な打撃を受けるだろう。もし米帝とその追従国家が、われわれの尊厳を冒涜し、共和国の最高利益を著しく侵害するならば、予測することもできず、避けることもできない、せん滅的打撃で答えるであろうし、敵の侵略の牙城を無慈悲に押しつぶすであろう。わが軍隊と人民は、偉大な金正日同士のまわりに固く団結し、反帝反米対決戦を総決算する今日のたたかいで、必ず最後の勝利を収めるであろう」


以上、少し長かったと思うが、北朝鮮が国連安保理での決議を念頭に置いて、如何なる圧迫や制裁にもひるまず、自主権を守るために粛々となすべきことをやっていくという、徹底した正面突破戦略を貫徹していくという覚悟を見ることが出来る。制裁決議が出る前に、こうした立場を明らかにすることで、衛星発射後に北朝鮮が、国家・民族の安保のためにやるといった事柄を、新たな制裁決議後もひるむこと無く実施していくということを明らかにしたものと受け止めることが出来よう。制裁の効果を考えるのは無駄だと言っていると思えばいいだろう。


最後に「反帝反米対決戦を総決算する今日のたたかい」と言っている点に注目したい。それは北朝鮮が何故、強硬な姿勢を保ち、正面突破戦略を波状攻撃のように展開しているのかを考える上でのキーポイントになろう。「総決算」というのであるから、北朝鮮の攻勢はアメリカが屈服(敵視政策の放棄→国交正常化)するまでの相当期間、しかも正面に布陣する関係諸国にも、波状攻撃のように加えられるであろう。はたしてアメリカや日本、韓国がこれにいつまで耐えられるのか、もしくは跳ね返すことが出来るのか見ものではある。そしてかつての強力な反帝勢力であった中国や、ロシアはいつまで日和見を続けていられるであろうか。