TVは嘘をついてもお構いなし? | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

テレビ朝日が10日北朝鮮の金正日国防委員長の後継者に内定されたと騒がれいる金正雲氏の最近の写真を手に入れたとして公開した。大変なビッグニュースだと思ったであろう。これを受けて韓国のTVが競ってこの写真を大々的に報道した。
だが、4,5時間後には、まったく別人の写真であったことが明らかになった。韓国のインターネット・ポータルサイト「タウム(次)」でカフェを運営している韓国人裵某氏(40)が、自分が2月にカフェにアップした写真だと証言したことによって明らかになったのだ。実際にこのカフェに入り写真を見るとまったく同じ写真を見ることが出来る。彼は平素から国防委員長と顔が似ているといわれており、他にも国防委員長に似せたポーズの写真があった。
なるほど、写真を見ると国防委員長の若かった頃と似てなくも無い。


問題はテレビ朝日がこの写真をいったいいつ、何処から入手したかも明かさず、一方的に決め付けて報道したことだ。写真の本人はTV朝日との接触は一切無いと語っている。そしてそれにも拘らず、全てのTV局が写真の真偽如何を調べようともせずに、競ってこの写真を金正雲氏だと決め付けて報道したのである。


何度同じ過ちをすれば気がつくのだろう。なぜ、確認もせずに勝手に決め付けてしまうのだろうか。これではいったほうが、やったほうが勝ちということになってしまう。特に北朝鮮関係の様々な証言は全て再検討すべきである。何とかという「料理人」にしても胡散臭く、ウソの匂いがプンプンしてくる。彼の言っていること、書いていることは全て客観的に確認できないものである。逆に言うとそれが嘘八百であることを立証することも出来ないのである。だから、何を書いてもウソだと証明できない。だからもっと嘘をつく。安明進もそうであった。もっとも彼はなぜか、自分が嘘をついてきたことを白状した。だが、彼のウソから始まった様々な勝手な憶測や物語は今も生き続けている。という事であるから、TV朝日の今回の失態は「運が無かった」という事になる。まさか本人が名乗り出るとは思ってもいなかったのであろう。

ところでこの件で報道ステーションの古館キャスターの言葉が振るっていた。「少しでも疑いがある以上、報道することは出来ない」という内容であったと思うが、彼の口からこんな台詞が出るとは、思いもよらなかった。なぜならそれが本心であるなら、すでに報道キャスターなど辞めているべきだからだ。彼は自分のしてきたこと、しゃべってきたことを完全に忘れているようだ。


実際、われわれがどれだけ北朝鮮のことを知っているのかさえ、疑わしいものだ。私はTV朝日の外報部長ともあったことがあり、そうした警告、注意もしたつもりだ。実際、今騒がれている金正雲氏にしても、名前がそれで正しいのかも確認できていないのだ。国防委員長も最初は金正一と書かれたことがあった。日本のマスコミは確認もしないまま勝手に名前を作ったのだ。金正雲氏にしても漢字で名前が照会されたことは無い。しかも現在、北朝鮮では名前を漢字で書かない。だから漢字はいわば当て字として使われている。金正雲氏の名前が正しいという確証は何も無いのだ。にも拘らずマスコミは勝手に名前を付けて使っている。
極めて失礼であり、無礼であろう。


全てがそうなのだ。ところが、マスコミはいわゆる「囲い込み」という方法で、「料理人」や安明進などのような人物に金銭的謝礼を渡しながら、確認も出来ない話を平気でどんどんさせるのだ。嘘をついてもばれることが無いので、いくらでも作り話が出来る。話の前後左右さえあわせればいいのだ。どうせブラック・ライターが書いているとは思うが、こんなことをマスコミがしているとは情けない話だ。


結局、マスコミがでっち上げ記事を、真実のように加工して世に流しているのだから、国民が本当のことを知ることができないのは、当たり前の話だということになろう。日本のテレビ報道は最低、最悪である。キャスターや登場する評論家らも、そのレベルに合わせたのであろうか。


この際なので一言書き添えることにした。金正日国防委員長に対するチャングン(将軍)ニム(様)という呼称についてだが、TVキャスターらを見ていると、時たま吐き気をもよおすことがある。将軍というのは軍隊の階級ではなく、朝鮮の方々は昔から尊敬できる指導者を「将軍」と呼んできた。実際国防委員長の軍隊の階級は元帥だ。豊臣秀吉が朝鮮を侵略したときに、立ちはだかった義兵の指導者クァッ・チェウは軍人ではなかったが、軍人からも将軍と呼ばれた。そして朝鮮の人々は目上の人を呼ぶときにニム(様)を付ける。先生は先生ニム(様)教授は教授ニム、社長は社長ニム、使用人でも年上であれば、例えば社長が秘書を秘書ニムとよぶ。韓国ドラマを見ればすぐに気づくだろう。

だから北朝鮮の人が国防委員長を将軍ニムと呼ぶことに、韓国の人々は何の違和感も感じないのだ。それは文化に根付いた言い方なのである。それを理解しようともせずに皮肉を込めて言うのは、両親に向かってYOUと呼ぶアメリカ人を「鬼畜」のように言うのと同じであり、韓国人がいとこ同士の結婚を許す日本人を「犬畜生」だと決め付けることと同じなのだ。それを理解できず、他民族の文化を知らないまま、自分の物差しをあてがう愚かしい輩、それを報道人だと肩で風を切って歩いているいやしい輩が、どうどうとテレビの画面で恥をさらしているのだ。

古館さん、呼んでくれていますか?