★隔日運行で需要が少ない山梨・静岡~福井・金沢を結ぶ高速バス。実際に乗ってみたら予想外の満席!

【運行データ】

(運行会社)富士急山梨バス

(時刻)東静岡駅(北口)23:01→金沢駅(東口)7:08
※始発は富士山駅(旧富士吉田駅)20:30発

(経路)富士山駅→国道139号線→富士宮・富士市内→東名→清水IC→国道1号線→東静岡駅→静岡IC→東名・名神→米原JCT→北陸道→福井駅→小松駅(この間北陸道を何回か乗り降りする)→金沢駅

(車両)富士山210か1004(社番F1004/日野セレガ36人乗りの4列座席車)

(その他)隔日運行。富士山駅発月・木・土曜日運行。金沢発は火・金・日曜日運行。2016年11月29日までの期間限定運行

IC=インター、SIC=スマートインター、JCT=ジャンクション、SA=サービスエリア、PA=パーキングエリアとそれぞれ略

かつて、静岡と北陸をダイレクトに結ぶ交通機関が存在した。
それは飛行機。FDA(フジドリームエアラインズ)が静岡空港~小松空港を結ぶ航空路線が2往復/日あり、就航が静岡空港開港直後で非常に話題であった。
しかし、よ~く考えてみると、そもそも静岡~北陸を移動する日常的な需要は少ない。実際の便も空席が多く、就航からたった2年で「休止」と称する事実上の路線廃止に追い込まれた。
つまり、静岡~北陸を移動するならば、JRやクルマで、「乗り換えが当たり前」「複数の高速道路を通るのが当たり前」と言うのが前提である。

隣の山梨県の富士急行(以下、「富士急」と略)グループのバス会社、富士急山梨バスが富士山駅と金沢駅を結ぶ高速バスを運行している。
しかし、広く知られている存在ではない。ツアーバスの部類ではなく、ちゃんとした路線バスであるが、夏季限定運行だ。
前述のとおり、日常的な利用は少ないので通年運行するほどの需要はない。

富士急の高速バス各線は同社の遊園地「富士急ハイランド」や富士五湖への集客を最大の目的とする。
特に富士急ハイランドは人気ある遊園地で、乗り換えなしで行けるメリットは大きく、他社路線で言うならば東京ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンに乗り入れるのと同じ意味を持つ。
最近は飛騨高山(単独運行)、大阪(近鉄バスと共同運行)、福岡(西鉄と共同運行)等今までの常識では考えられなかった地域とダイレクトで結ばれるようになった。
きっぷも富士急ハイランドの入園券付きの往復券が割引で販売されている。
金沢もこの一環である事は言うまでもない。イメージとしては富士山駅や河口湖周辺で集客して、富士宮・富士(路線によっては御殿場や沼津になる事もある)・静岡で日常的な利用も拾う。前者がメインで後者がサブと考え良いだろう。

乗車前の事前調査(主に同業者のブログ等)、私の考えとして、「そもそもこの路線に乗るお客は少ないのではないか」と。
現に同業者の乗車報告ブログ等見ていると、空席が目立つような結果で、便によっては2~3人しかお客がいない事も。
このバスも全席指定で、「発車オ~ライネット」できっぷを用意。乗車する前に空席状況を確認したら、案の定「空席あり」だった。

富士急山梨バス 北陸ライナー

富士急山梨バス 北陸ライナー

↑東静岡駅に定刻より約10分遅れてで到着。バス停で待っている人は何人かいたが、実際に乗ったのは私を含めて2人だけ。
既に車内照明は薄暗い。ほとんどのお客は寝ていた。
すぐに乗車券が回収される。富士急の高速バスは原則として、降車時に回収する事になっているらしいが、夜行便では乗車券の紛失等のトラブルが多いため、乗車時に回収しているとの事。
車内に入ると、意外に満席だった。

最前列が予備席扱いで、運転士の業務カバンやバケツ等が置いてあった。
座席はメーカー標準の高速バス仕様のもので、1人あたりの専有面積は広い。リクライニングすれば案外快適だが、肩幅は狭く、肘を横に広げると隣のお客にぶつかる。
床は「木目調」で高級感がある。
東静岡駅発車後、運転士から停車するバス停、その他注意事項をマイク放送。
距離的に長いため、全区間ワンマン運行は出来ず、途中交代しながら金沢まで進めて行くとの事。トランクルームには運転士用の仮眠室もあり、交代運転士は常にここにいた。
運転士は改札時に降車するバス停を確認しており、降車がないバス停は通過する。この時は福井駅・小松駅で降車があったが、なかった場合は北陸道を降りずに進むだろうか?

唯一の解放休憩場所が東名の牧之原SA。23:54~0:20と長めだ。
最前列が空席だったため、運転士から許可を取りこの座席を使用する事にした。運転席真後ろである事、夜行便なのでカーテンを閉めるため、前の様子を伺う事は出来ない。
目に入ったのは、「お客様の安全確保のため指差・呼称運転実施中」の文字。
確かに運転士はそれを励行しており、当たり前の事ではあるが、その旨の提示の有無によって、お客に与える「安心感」はまるで違う。

最前列=足を伸ばせないので窮屈と思っていたが、実際にはリクライニングすると、足を伸ばす事が出来た。思っていたよりも面積が広い。
他列の座席との違いは、日野セレガ・いすゞガーラでは、最前部の座席は3点式シートベルトのため、肩にもかけないといけない。

牧之原SAから2時間ほど走り、午前2:30過ぎに大きな休憩施設に入った。具体的な名称等不明であったが、恐らく岐阜県内だろう。
さらに2時間走り、4:20頃にも停車した。ここまで来れば福井県内のはずだ。いずれの停車で運転士の交代が行われた模様だ。
福井駅には定刻より20分早い5:00着。3人下車した。
この後、小松駅でも下車があったため、福井・小松ICで北陸道への出入りを繰り返す。
到着時の案内は自動放送との併用で、声の主や音楽はJR東海バスと同じものだった。京王の高速バスもこれと同じものを最近は使用しているため、「中央高速バス」の一員である富士急グループも同じになると言う事か。

松任海浜公園では7~8人がまとまって下車した。ここは一般道ではなく、北陸道のPAでSICもあった。PA施設の奥は日本海で、石川県内の北陸道は一部が海岸線に沿った線形になる。
ここは徳光PAで、近くにパークアンドライドがあるため、ここにマイカーを止めてバスに乗り換えるスタイルが定着しているようだ。

金沢西ICで北陸道を降りて一般道へ。経路的に香林坊等の金沢市中心繁華街を通るため、これらでも細かくバス停が設定されているが、下車するお客は少なかった。
金沢駅到着は定刻よりやや早く7:00。ここを目的としているお客がほとんどであった。

あくまでも、富士急ハイランド~金沢をダイレクトで結ぶ路線として機能しているのは、富士急の意図通りであった。
途中となる静岡や福井で乗り降りするお客はやはり限定的。いずれも広く宣伝もされていないため、知っている人自体が少ない。
夏季限定の隔日運行とあって、今後も運行される保証はどこにもない。
この日は満席であったが、これが「普段の姿」とは思えない。偶然満席だったと思う。平日であれば、やはりもっと利用は少ないのではないだろうか?
ただ、便利な路線設定ではある。東静岡駅~金沢駅が4,100円と距離や時間にしては破格であったが、安さも集客を促すための狙いだろう。