著作集 III、310-311頁、311-312頁 「音楽とバロック」
高田さんは史実をよく体得している。
《傑作は常に私たちに「宗教感」を与える。・・・ 「宗教的」という言葉が持つ危険性を知りながら、私はあえてこう言う。なぜならば、宗教に対する体感がヨーロッパと日本ではちがうからであり、ヨーロッパの「人間歴史」が経験した「宗教」なるものは日本にはない。・・・ ヨーロッパでは宗教体感は芸術体感と一つであり、・・・ 宗教も芸術も「人間経験」だったのである。この一元性 を最も現わすのが音楽であり、・・・ 「宗教的」とか「神秘的」とかは「命題」が指示するものではない。「ものそのもの」つまり「人間本質」が直接に現われる時、「高い知性」と「宗教感」が溢れ出る。》
一元性の芸術家 高田さんだから書ける言葉だ。