少子化問題を克服したフランスに比べ、日本がこの問題でうまくいっていないのは、精神風土にも原因があると思う。日本ではすべてが自然でないのだ。どういうことかというと、周囲が余計なことを言いすぎるのである。「おまえも子供を持てばわかる」、という言い方に端的に現われているように、自然な愛情の結果である出産にも、自然な感情のままで済ませまいとするように、「世間」が、日本ではまとわりつく。「個」が「世間」に屈服すべきであるような物言いが、日常生活でありすぎるのである。日本にはイデアリスムの土壌がない。だから、どんな次元にも、「世間」が我がもの顔で口を出す。「おまえも子供を持てばわかる」という物言いを聞けば、「子供などつくるものか」と思うだろう。こういう意思の発生の帰結は、重大である。日本の後進性は、自然性に余計な人為性が絡みつきすぎていること、つまり、自然性そのものを文化的に洗練すべき知性を、窒息させようとする社会土壌に、原因がある。