人間が言葉の世界に生きているということはじつにやっかいで、他者が非生産的に人生に介入してくるのは言葉によってである。愛ではない他者関係は言葉の世界のものであり、観念の世界のものである。日頃沈黙の世界に生きていなければならない美術者たちすら、言葉の世界に生きている。 

 

愛ではない他者関係を観念の世界と一緒に放擲する術を、心得なければならない。 深く自己感覚を生きようとする者のみが、この放擲を習得しうる。 人間は孤独なのだ。言葉人間など全部放擲するほど。 

 

俗界とは言葉と観念の世界にほかならない。 俗界に存在も愛もない。