自分の観点からものをみることは、ひとのつねである。賢者と愚者の分岐点は、自分の観点から一歩出た視点をももてるかどうかである。これはかならずしも自分の観点を相対化することではない。賢者は自分の観点に確信を持ちながら同時に自分の観点を浮遊させることを知っている。デカルトの懐疑のような思惟操作をつねに内心でやっているということである。これをしない者は自分の観点をただ盲信しているに等しい。盲信に特有の力で他者に迷惑をかけることは止めてほしい。賢者になれない愚者はけっきょく他者に拒否される。 

 

ところで、自分の観点とは、何か。反省できる者は反省しなければならない。自分の観点というものを、反省し自覚できるほどの者が、この世にどれだけいるか。