- 2016年08月07日 05時06分
- 提供:時事通信
宇宙が誕生した際、現在の世界を形作る物質と同じだけあった「反物質」が消えた謎を説明する現象が、素粒子のクォークだけでなくニュートリノでも起きている可能性が高いことが分かった。高エネルギー加速器研究機構や東京大などの国際研究グループが7日未明、米国で開催中の国際学会で発表した。
物質と反物質は鏡に映したようにそっくりだが、電気のプラスとマイナスが逆のため、合わさると光になって消滅してしまう。しかし、反物質だけが消えたのは、「CP対称性の破れ」と呼ばれる現象が原因と考えられている。
原子核を構成する陽子や中性子のもとのクォークでCP対称性の破れがあることは、小林誠、益川敏英両博士の理論で予想された。日米の加速器実験で確認され、両博士は2008年のノーベル物理学賞を受賞した。しかし、宇宙ではクォークより電子の仲間のニュートリノの方が圧倒的に多いため、ニュートリノで確認する必要がある。
研究グループは10年に、茨城県東海村の大強度陽子加速器施設(J-PARC)から岐阜県飛騨市の大型検出装置スーパーカミオカンデに向け、ニュートリノを発射する実験を開始。ミュー型が電子型に変化した数と、反ミュー型が反電子型ニュートリノに変わった数を比較した。
その結果、電子型は32個、反電子型は4個観測。変化した確率に違いがあり、CP対称性の破れがある可能性が高いことが判明した。代表の中家剛京都大教授は「まだ信頼度は90%。現在の13倍のデータを集めて確定させたい」と話している。 【時事通信社】