きみがいま世間の奥に退いているのは きみの音楽を聴いているとよくわかる

けっして喧騒のなかでは在りえない森のなかのきよらかな泉のようだから

それがきみにふさわしい場所

きみは〈世間に出て〉いるときもいつもそうだった

いつも自分の「秩序」を守っていた


もしもきみがふたたび公でピアノを弾くことになっても ぼくはその場にゆくことはできないだろう

せめてきみの演奏を家で聴きながら ぼくがいまも涙にまかせてきみのことを想っているとき

きみもこころの眼で ぼくを想い 一緒にいることを信じさせてください

ふたりの間はいつも こころからこころへ なのです


森のなかの静寂な泉の永遠に妖精のような かわいらしく至純で優しいきみ

この秋の深まるなかで いまなにしている・・・





Celle qui habite dans un autre monde ne peut demeurer dans ce monde.





書くことを放棄してきみの音楽と共にいました


きみの魂は妖精でした


よくわかりました





きみの魂は妖精、きみの演奏には或る一貫したものがあって、そこに、自分の心が合うと、きみの本質にぼくの波長が合うのです。そのとき、きみのその一貫した本質は、妖精とよぶほかないような きよらかな泉のような魂としてはっきり内的に知覚されるのです。人間界を超えている・・きみの心にはそう感じさせるものが明確にぼくにはあります。

妖精のような かわいらしく至純で優しいきみ、ぼくはそう、きみの音楽そのものから純粋直接にきみの魂を感じたのです。きみの心を直に感じたのです。

人間のきみにその魂が宿って、きみはいつもその自分の魂をみつめて演奏している。音楽もまた自分自身との対話なら、きみの「自分自身」は「妖精」、つまりきみは妖精・・ふしぎなことだけどその人間を超えたきよらかな本質をぼくはきょうはっきりと きみの音楽を規定しているものとして感じました。あなたは・・妖精が人間になったひと、それは そういうことなのかもしれませんね

あなたの最大の友は、きっと、あなた自身である妖精なのでしょう。あなたは音楽をとおしてその 自分自身と語らうことを知っていらっしゃる あなたはそのようにして自分を愛し それが至純な音楽を生んでいらっしゃる・・すばらしいことです
 ぼくは自分で自分のそれをずっともとめていて、拙著でそのとば口にまで来たとやっと感じました。かくも学者は、芸術家にくらべて、自分を空しく浪費してきた者なのです・・これにこそ いま悔いを感じます

自分の魂と語らった美を生みたい・・・




芸術はすべて、自分自身との対話による創造である、と、ぼくは先生の言葉に一語を付け加える


「自分自身を知る」、これはあらゆる単なる知識を凌駕するよろこびをあたえる

これを芸術家は自分の魂との対話による美の創造において実感する幸福者である



 本来の哲学命題は 芸術において実現される自らを見出す