荒涼と星一つ光る藍の空 無限宇宙の重みを感ず
‐自作‐
―悪魔(魂の否定者)は徹底的に此の世に存在する。闘うべし―
星 (抜粋) マルセル・マルティネ
(上田秋夫訳 1930)
純潔な、生々して冷たい星よ、おゝ独りゐる者よ、
凍るやうな風を浴びる、露はな広大無辺の空の中に
おんみは輝く。
(・・・)
星よ、孤り夜警するものゝ唯一の友よ、
死を約束されてゐるこの男の顔の前に
数歩の所に他の一人の男が
彼に死を約束したやうに夜警をしてゐる。
鉄砲の上に手を置いて彼は夜警をする
そしておんみを見つめる、星よ、孤りの星よ。
そしてこの二人の男は想ひに耽る。
お互から数歩のところに
そして一つの深淵に距てられて、
一人は他の者に命をやりとりする仇敵だ、
しかし星よ、おんみは二人ともに彼等の友だ、
彼等二人はおんみを見つめる
そして彼等が想ひみてゐるのはおんみなのだ。
―おゝ深淵の両岸にゐる悲壮な夜警する人、
お互に知らない敵の兵士の
共同の夢想!
(・・・)
孤りゐる星よ、
お互に知らずに夜警をする者の星よ、
お互に敵である兵士の星よ、
私も眠らずにゐるこの平穏な同じ夜の中に、
私も亦おんみを見つめる。
(・・・)
あそこでその同じ星をみつめてゐる夜警の者達よ、
あなた達の最後の溜息が無くなつてゐたらうか
――近寄れない星よ、孤りゐる星よ、
おんみは静寂のなかに輝く、星よ、人間のやうな星よ、
そして私達は、胸の裂けるやうな訴へを聞く、
死んでゆく者達の絶望した訴へを。
永遠の親友マルティネ