アリスティード・マイヨール(1861-1944)「イール=ド=フランス 」1925

先生が私淑した大彫刻家の中期代表作と目されるものである。学生としてヤスパースに没頭していた頃、もう夕方であったが、不意に上野の国立西洋美術館に行きたくなった。常設されているこの像とまさに出会った。言葉を超えた存在論的充実と和やかさ広やかさに包まれ見ほうけていた。孤独の極限から視界が開け報われ解放された内的空間〔「おお 思索の後の褒賞よ 神々の静けさをとおく見はるかすという!」を想起する-628ヴァレリー「海辺の墓地」-〕。その現前する記憶はこの写真を観る度いつも蘇える。フランスに居て訪れた彼の生地バニュルスの海浜がわたしにとってもっとも親密な地中海である。