資生堂 アネッサ エッセンスUV アクアブースター マイルドタイプの解析1 製品概要編 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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化粧品犬です。

 

今回から資生堂 アネッサ エッセンスUV アクアブースター マイルドタイプの解析を始めます。

2017/2/2に発売された新製品です。

いわゆる銀のアネッサのマイルド版という位置づけの製品です。

金のアネッサのマイルド版も同時発売されていて、それも今後取り上げる予定なのですが、実はこれ銀から書いたほうが説明しやすいのです。

金のマイルド版については少しお待ちください。

 

今年は金銀のアネッサはリニューアルがないので、当初この製品が出たことに気づきませんでした(^_^;)

おかげで取りあげる時期がやけに遅くなってしまいました。

今年のテーマは去年から始めた「アクアブースター機能」のプロモーションを継続ということみたいで。このマイルドタイプやフェイシャルタイプ、BBタイプなどに横展開したタインナップが作られていたんですね。

 

しかし「アクアブースター機能」については下記エントリーで書いたように、少なくとも2014年には既に実装されていた物の再プロモーションであり、あまり興味を持てませんでした。

 

資生堂アネッサ パーフェクトUV アクアブースターの解析 番外編 FJの資生堂の報文を読む2017.6.10追加

 

でもそろそろ夏も終盤だし一応見ておくか〜と軽い気持ちでチェックところ、この製品って意外によく考えられている!ということに気づき、今回の登場となりました。

 

この製品はSPFが通常のアネッサより低いです。通常はSPF50だがこの製品は35。

最初は、マイルドタイプ=SPFの値が低い、と言うよくある公式に則って作ったのだなと思いました。

しかし中身を見たら、違ってた。真面目に作った製品でした(^_^;)

 

いつも書いているのですが、現在の紫外線吸収剤の状況は昔と違い、新しくて安全性の高い物がどんどんでできている状況です

安全性データも一昔前と違って秘密にされず、公開されています。

一昔前ではマイルドな日焼け止めを設計するには、悪者である紫外線吸収剤を酸化チタンなどの紫外線散乱剤で置き換えて作り、そのためにSPF値が低くなったり白浮きしたりするのは仕方ないよね・・・という方向性でした。

しかし紫外線吸収剤の安全性が、エステル油などと較べても大差ないと分かった現在では、その考えのままで良いわけがありまません。

資生堂さんも同じ考えだったようで。

 

例えばアネッサのブランドサイトにも、こんな事が書いてあります。

ちょっと分かりにくい表現なのですが、書き出してみます。

 

敏感肌の私でも使えるサンケア製品はある?敏感肌に朗報!肌が喜ぶサンケア選び

「これまでの敏感肌用サンケア製品の多くは、刺激の少ない紫外線防御剤を使用することで起こる白浮き感や粉っぽさ、のびの悪さを感じやすいものが少なくありませんでしたが、最近では低刺激かつ高SPF&PAでも、使い心地も仕上がりも満足度の高いものがたくさん出ています。」

 

文中のアンダーラインを引いた、「刺激の少ない紫外線防御剤」=酸化チタンや酸化亜鉛、の事ですね。

奥歯に物が挟まったような表現になっているのは、このアネッサマイルドタイプでも、酸化チタンや酸化亜鉛を排除しきっているわけではないからでしょう。

本製品のキモはそこにあるわけでは無いようです。

まあそのキモ部分が何かは、断片的にしか書いてないんですが。

それを明かしていこうというのが、今回のエントリーです。

 

前置きが長い(^_^;)

本編に入ります。

 

 

外観

こんな感じです。

 

外観は銀ではなく白です。

もう販売的にはシーズンオフのせいか、アマゾンで2400円/60mlぐらいでした。

 

 

概要

新製品なのでニュースリリースが作られています。

「アネッサ」は今と未来の美肌を守る「ビューティーサンケア」へ。敏感肌用とメーキャップアイテムも登場!

 

この内容を押さえていきましょう。

 

資生堂は、16年連続売上シェアNo.1の日やけ止めブランド「アネッサ」から、汗や水に触れると紫外線をブロックする膜が強くなる革新的な技術「アクアブースター技術」を新たに搭載した2品「パーフェクトフェイシャルUV アクアブースター」「薬用美白エッセンスフェイシャルUV AB(医薬部外品)」をはじめ、デリケートな肌を守るマイルドタイプと、スポーツ時の過酷な状況でもメーキャップの美しさを持続させる新技術を搭載した新製品を2017年2月21日(火)より発売します。

 

今年のアネッサは横展開を強化するわけですが、特にフェイシャルタイプとマイルドタイプに力が入っていることが分かります。

今回の解析とは関係ないですが、化粧品犬は、これまで銀のアネッサは美容成分をたくさん配合しており、どちらかと言うと顔用だと考えていたのですが(^_^;)

フェイシャルタイプがでたことで、この考えが否定されてしまったようです。

現在の資生堂の見解では「SPF値は同等だが、「水に強いのが金、美容成分が多いのが銀」という事になっています。ちょっとムリヤリっぽいですね。特に今回取りあげる、この銀のマイルドタイプは、金のマイルドタイプよりSPF値が低いのですが。

それについて資生堂さんのコメントはありません(^_^;)

 

1)未来の美肌を守る「ビューティーサンケア

紫外線はシミ・乾燥・小じわなど、肌老化を引き起こす要因になるということは知っているものの、日やけ止め効果の高いものは、肌への負担があると考えている方が多いようです。アネッサの日やけ止めには軽やかな使い心地で美肌エッセンスをたっぷり配合しているので、紫外線ダメージをしっかりとケアしながらスキンケアします。今はもちろん未来の美肌を守ります。

美肌エッセンス:「パーフェクトUV アクアブースター」「パーフェクトUVスプレー アクアブースター」「パーフェクトフェイシャルUV アクアブースター」の3品には、バラ果実エキス、ヒアルロン酸、グリセリン(保湿)を、「エッセンスUV アクアブースター」「薬用美白エッセンス フェイシャルUV AB」の2品には、ブルガリアローズ水、イザヨイバラ果実エキス、西洋バラエキス、ヒアルロン酸、グリセリン(保湿)を配合。

 

実は関係する説明はここだけであまり書いてないのです。

しかもアクアブースター技術の説明は去年からやっているし、あとは当たり障りのない美容成分エキス類の説明です。

エキス類について言えば、通常の金銀アネッサでもその差は怪しかったのですが、今回のマイルドタイプでは、エキス類は金銀で全く共通です(^_^;)

このあたりは金のマイルドタイプを取りあげる時に書きますが、金銀のマイルドタイプの差は、SPF値の他は、配合されている粉体の差しかありません(^_^;)

マイルドタイプでは、色々矛盾があっても良いことになっているようですね。

 

ましかし、ニュースリリースにかいてあるのはこれだけ。

あとパッケージやブランドサイトの製品説明によると以下の追加説明があります。

無添加(アルコール、防腐剤(パラベン)、鉱物油不使用)・無香料・無着色

 

これだけです(^_^;) ある意味、潔い(^_^;)

そこで、ここからは化粧品犬の想像で書いていきます。

 

巷に溢れるジェルタイプの日焼け止めで大体の人は間にあうのですが、それではダメ(肌に合わない、痛い)な人に向けて、資生堂さんはこの製品で、以下のことにトライしているようです。

なかなりマニアックなトライです。

 

列挙します。

 

1)ノンアルコール化

既存の安い日焼け止めは大体アルコールが配合されていて、アルコールがダメな人は人数は少ないがいますからね。

ただ、そうしてもべったりしてしまういので、そこは配合する粉体を工夫し、パウダリーな使用感に寄せているようです。

2)非鉱物油化

石油精製品の油を排除しています。ミネラルオイルだけでなく、イソドデカンなどの軽いタッチの使用感の良い炭化水素系の油も、止めてますね。炭化水素系の油に慣れている大手の[開発陣にとっては、けっこう辛いでしょう。

3)無香料化

これは諸刃の剣というか。この製品、やや日焼け止め臭いです。安定剤で入っているピロ亜硫酸Naの臭いかも。

4)UVB紫外線吸収剤のメトキシケイヒ酸エチルヘキシルを省いている

これが最大のポイントです。メトキシケイヒ酸エチルヘキシルは最古参の紫外線吸収剤で、それなりに分解するし、懸念のある安定剤であるBHTを必要とするため、これを配合すると必然的にBHTが製品に入ってしまう。

それでもこのメトキシケイヒ酸エチルヘキシルがよく使われているのは、値段が安いということと、他の紫外線吸収剤を溶かす効果が高く、いわば溶媒として機能しているからです。

このことは製造メーカーのBASF社にも、直接聞いています。

サイトジャパン2017(化粧品産業技術展)での収穫1 紫外線吸収剤のこと2017.6.5追加

ただBASF社が公開しているMSDSでは安全性に問題はないので(上記エントリー参照)、実際にトラブルが出る人は限られると思いますが、この辺りは個人の差が大きい問題です。

しかしメトキシケイヒ酸エチルヘキシルって、紫外線吸収剤を配合するほとんどの製品で使用されているような原料ですから、これを省くのは技術的にはおもしろいです。

おそらく、比較的紫外線吸収剤を溶かしやすい油であるセバシン酸ジイソプロピルに溶けるだけとかしているのだろうと思いますが、限界はああるわけで、SPFはそれは下がります。

その下がったまま製品化したのが、この銀のマイルドタイプというわけです。

 

まあこれは、大きくは書けないですね、既存のアネッサはメトキシケイヒ酸エチルヘキシル使ってますからね。

しかし、資生堂さんのような大手がこのようなアグレッシブな製品を作ったことには、いい意味で脅かされました。

 

ちなみに、SPF低下にあらがって、酸化チタンをさらに加えてSPF値を50まで押し上げたのが、金のマイルドタイプのようです。

金のマイルドタイプは、比較すると、そのぶんやや白浮きします。

 

@cosme評価

クチコミ 51件 注目人数 111人で、評価点が4.8点とやや冴えません。2017/8/19閲覧。

低得点な方のレビューを見ると、やはり無香料にしたため、日焼け止め特有の匂いが結構してしまうのが問題のようです。

そこはどうでも良かったのになあ・・・、こんなことで評価を落とすのが残念です。

あとノンアルコール化の弊害で、さっぱりしない事に不満を持つ人もいますね。

ただ、既存のアネッサは痛いけどこれは痛くないと言う人もいて、それなりに製品としての役目は、果たしているようです。

 

 

使用感など

@cosme評価の項では色々書いたけど、化粧品犬も普通のアネッサで全く大丈夫な人なので。

この製品の、日焼け止めっぽい匂いや、パウダリーな方向に振られても隠しきれない、油性感やテカり等が結構気になる。

加えてSPF35なのに、SPF50の普通のアネッサと同じ値段(^_^;)

技術的にはおもしろく、製品化した姿勢も良いと思うんだけど、買うか?と言われると微妙。

 

本当に肌の弱い人や既存のアネッサが肌に合わない人向けの製品ですね。