花王エッセンシャル(2016) の解析5 さらさらスムース髪シャンプー処方解析編 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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化粧品犬です。

サンプルをもらったこともあり、8/6にリニューアルされた新エッセンシャル シャンプーとコンディショナーの解析をやっています。

全体の概要は、ちょっと変則ですが次の2エントリーに書きました。

花王エッセンシャル(2016) の解析 しっとりツヤ髪シャンプー/コンディショナー1 サンプル編
花王エッセンシャル(2016) の解析4 (今さらですが)製品概要編

安易に書き始めたため二つに分かれて見にくくなってしまい、申し訳ないです。

今回から、さらさらスムース髪シリーズを取り上げていきます
上記エントリーで書いたように、シャンプー、コンディショナー、キューティクルエッセンスの3種類の商品がありますね。

今回はまずシャンプーの処方解析します。
正式名称は、エッセンシャルキューティクルシャンプーさらさらスムース髪になります。
長すぎるのでタイトルでは適当に短縮しました(^_^;)

さらさらスムース髪シャンプーは、旧製品では「エッセンシャル フリー&'スムースシャンプー」と言ったんですね。
その時のコンセプトは「髪の毛ざわりがスムースになる」ということと、「髪が乾くのが早い」(速乾性)ということでした。
今回から名前は大きく変わりましたが、基本的な製品コンセプトは変わりません

では早速始めます。
いつもの様に、裏面の処方を整理します。
今回は、旧製品(2014年年度処方)の裏面表示も整理し、新製品と併記してみます。
原料の配合順は裏面のまま変えずに、機能毎にパート分けし、共通の成分についてはできる限り近づけて書いていますが、場合によって近くに書けない場合もあります。
こんな感じになりました。


リニューアルでも、あまり変わってませんね。
特に洗浄剤のパートは、順序は変わっていますが全く同一です。

しかしこのあとのコンディショニング剤のパートは結構違いますよ。
旧製品では、3種類全てのシャンプーに、リンス基剤であるカチオン界面活性剤(ステアロキシプロピルジメチルアミン)が配合されていたんですよ。
アジエンスシャンプーみたいな感じですね。

アジエンスについては以下のリンクを参照です
花王 アジエンスシャンプーしっとり仕上がるタイプの解析 後編
よく悪くも、3種類すべてが(良い意味で)「チープ・アジエンス」だったわけです。

しかし新製品の、さらさらスムース髪シャンプーでは、このステアロキシプロピルジメチルアミンが外されています
今回は、下記のしっとりツヤ髪シャンプーだけが、「チープアジエンス」的なリンス基剤の配合を維持されています。



なんか今回のテーマの、さらさらスムース髪シャンプーは、リニューアルでお得感が下がったな。

あと、新旧の処方を較べると、いくつかの新成分が追加されていますね。
具体的には、PPG-2ヒドロキシプロピルトリモニウムセルロース、ビスセテアリルアモジメチコンの2種のコンディショニング剤です。
リンス基剤(ステアロキシプロピルジメチルアミン)を外した代わりなのかな?とも思いますが、この2種類は今年度のエッセンシャルシャンプーでは共通して配合されてるので、さらさらスムース髪シャンプー独自の成分ではありません。

「髪の毛ざわりがスムースになる」ということと、「髪が乾くのが早い」に関係した成分では無いんですね。
実は、これらに関係した成分は、残念ながらシャンプーの方には配合されていません
コンディショナーのほうに配合されているんですよ。

シャンプーだけみると残念ながら、エッセンシャルしっとりツヤ髪シャンプーから、しっとり感を若干減らしたものが、さらさらスムース髪シャンプーである・・・ということになります(^_^;)

あとのお楽しみは、さらさらスムース髪コンディショナーの処方解析で(^_^;)


あとは例によって、原料毎のコメントを書いておきます。
(大部分の内容は、しっとりツヤ髪シャンプーと重複ています)

洗浄剤
・ラウレス硫酸アンモニウム:ラウレス硫酸アンモニウムは、ラウレス硫酸ナトリウムの刺激性を改善した物です。地味に珍しい原料です。また、このラウレス硫酸Naは、花王さん自身が生産した、特別に泡立ちのよい物である可能性が高いです。詳しいことはラウレス硫酸Naの項を参照してください。
・ラウレス-4カルボン酸Na:酸性石けんとも言われる刺激の低い洗浄剤。ただし、泡立ちは良く無く、しっとり系の洗い上がりになる。
・ラウリルヒドロキシスルタイン:よく使われているコカミドプロピルベタインと良く似ている、安さとそこそこの安全性が取り柄の洗浄剤ですね。
・ラウラミドプロピルベタイン:よく使われているコカミドプロピルベタインと殆ど同じ成分で、安さとそこそこの安全性が取り柄の洗浄剤です。
・コカミドMEA:シャンプーでよく使われる増粘・増泡剤
・イソデシルグリセリルエーテル:花王さんが良く使う起泡剤。花王さんの食器用洗剤のキュキュトにもアルキルグリセリルエーテルと言う似た名前の起泡剤を使っているので、同じ成分かもしれません(表記からは分かりません)。
・ラウレス硫酸Na:シャンプーでよく使われる洗浄剤。ネットでの評判は悪いが、洗浄力は強めであるものの、刺激はそれほどは高くない。そもそも、ラウリル硫酸Naという刺激の強い洗浄剤の、安全性を改良した洗浄剤。

下記エントリー参照です。
花王 メリットシャンプーの解析(前哨編2 ラウレス硫酸塩の安全性)
http://ameblo.jp/kesyouhinken/entry-12019765318.html

また、このラウレス硫酸Naは、花王さん自身が生産した、特別に泡立ちのよい物である可能性が高いです(化粧品の表記からは分かりませんが)。
メリットに使われているラウレス硫酸塩は、そうでしたね。メリットのような医薬部外品は、構造が正確に表示されるので、花王製のトイ別に泡立ちの良いラウレス硫酸塩であることが分かります。
下記エントリーにて詳細を書いていますので、興味ある方はどうぞ。
花王 メリットシャンプーの解析(本編 洗浄成分について)

コンディショニング剤、オイル類
・ヒマワリ種子油:ヒマワリ種子油はオリーブ油に似た油で保湿感が高く、トコフェロール(ビタミンE)を豊富に含むことで知られている。元々は不飽和結合が二個あるため、オリーブ油に較べて安定性の悪い油であったが、近年では品種改良が進み、オリーブ油レベルの安定性に改良された製品も出回っている。
・ラノリン脂肪酸:羊から取られるラノリンを加水分解して得られる、脂肪酸混合物。エモリエント剤として機能する。
・ミリスチルアルコール:柔らかめのワックスで、本来はコンディショナーに使われる事は多い成分。
・PPG-2ヒドロキシプロピルトリモニウムセルロース:ヒドロキシプロピルセルロースをベースにし、髪への吸着性を高めたカチオン化ポリマー。
・グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:昔から使われているカチオン化ポリマーの1つだが、最近再度よく使われるようになっている。
・ポリクオタニウム-10:もっとも良く使われているヘアシャンプー用のコンディショニング剤。別名カチオン化セルロース。
・ポリクオタニウム-52:別名 N - ジメ チ ル アミノエ チ ル メタクリル 酸 ジ エ チ ル 硫 酸 塩・N , N - ジ メ チ ル ア ク リ ル アミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール 共重合体。花王自身も使っているが、外部に販売もしている花王の化粧品原料で、コンディショニング剤。ラウレス-16と混合された状態で販売されている。
・ビスセテアリルアモジメチコン:両末端に疎水基を持つアミノ変性シリコン。べたつきが少ない。
です。
・ジメチコン:化粧品で最もよく使われている、普通のシリコン油

防腐剤
・安息香酸Na:広く使われている、比較的低刺激な防腐剤。食品にも使われる。
・フェノキシエタノール:比較的低刺激な防腐剤。ナチュラル系の化粧品に使用される事も多い。
当ブログでは、安全性については以下のエントリーで詳しく書いた。
プロピルパラベンの安全性についての文献を紹介

増粘剤、保湿剤、香料等
・エタノール:エタノールです。過去には変性剤を加えた変性アルコールが使われていましたが(変性すると酒税が回避されて安くなった)、税制が変更されて変性アルコールが値上がりしたため、現在は変性アルコールは使われず、ただのエタノールを使うのが主流になっています。
・ジステアリン酸グリコール:シャンプーで良く使われているパール化剤。
・リンゴ酸;通常はpH調整剤として使われる。花王によると、ドライヤーの熱から髪を守り効果もあるとのこと(花王のスタイリング剤である、リーゼの説明より)。
・コハク酸2Na:化粧品犬的には強くは信じられないのですが、髪内部にたまった不要なカルシウムを洗い出す効果があるようです。
詳しくは下記エントリーで書きました。
花王 アジエンスMEGURI の解析2 コンセプト・理論編

・PPG-3カプリリルエーテル:花王さん自身の新規化粧品原料で、髪にまとまりとツヤを与え、シリコーン様の感触を実現する新規成分です。
PPG-7:ポリプロピレングリコールの1種。水を改質し若干の油性感を与える成分。
・ラウレス-4、ラウレス-16、ラウレス-23:花王のシャンプーに良く配合されているノニオンで、増泡・増粘効果を高める効果がある物です。
水酸化Na;pH調整剤。
ベンジルアルコール:若干の抗菌性を持つ成分。水と混合可能で、油溶性の成分を溶かしやすくする効果もある。