P&G 除菌ジョイコンパクトの解析2 除菌効果とは?編 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

大手会社の開発に勤務していましたが、好きな化粧品を好きなだけ追求するため円満退職。
ノラ犬となった化粧品犬が、面白いと思った情報を発信していくブログです。
化粧品コンサルタントとして仕事も受けています。
パームアミノ・ラボ合同会社 imori@palmamino-labo.jp

化粧品犬です。

除菌ジョイの解析2回目です。
今回は、除菌効果とは?編をお送りします。

台所用洗剤の除菌というと、なにやら定義でもめていたなーという印象ですよね。
なのでこの機会に、何があったのか確認しておこうというのが今回のエントリーです。
今回じっくりチェックするまで、化粧品犬もいろいろ誤解してました(^_^;)
では開始~。

Wikiによると、日本にレギュラータイプのジョイが発売されたのが1996年。
そして1998年に「除菌ができるジョイ」(後の、「スポンジの除菌ができるジョイ」)が国内販売され、これに各社が追随した製品を出し、日本で除菌洗剤の歴史が始まったらしいです。

除菌が出来るメカニズムは次回にやる予定なのですが、ジョイには殺菌剤的な物が配合されていないのです。
おそらくジョイによって除菌と同時にもたらされたコンパクト化という技術が除菌機能も担っているのでしょう。

1998年以降除菌洗剤が乱立する状況となっていたのですが、2003年に東京都がそれを問題視したことで、状況が変わり始めます。
これが、下記のレポートです。同一内容ですが、最初の資料が本レポート、後半の資料が概要です。
「スポンジ除菌」のできる台所用合成洗剤(東京都消費生活総合センター)2003年 https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/test/documents/jyokin.pdf
除菌」表示の洗剤に過大な期待を持たないように!! (東京都消費生活総合センター技術支援課) 2003年
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/test/documents/jyokin_a.pdf

後半の資料の内容は以下のようになっています。

1) ヨーロッパ公定法(*)に準じて殺菌能力のテストを行ったところ、「スポンジ除菌」の表 示がある7銘柄のうち、5銘柄が殺菌作用がなかった。一方、「スポンジ除菌」の表示が ないもの(3銘柄)でも1銘柄は殺菌作用があった。 *)ヨーロッパ公定法では、テスト菌の菌数を10の5乗以上減少させる能力を有するものを殺菌作用があるとして いる。

(2) 実際に家庭で使用したスポンジを使って菌の減少テストを行ったところ、いずれの商品 も菌数が減少したが、除菌表示の有無によるはっきりした差は見られなかった。 また、「除菌」処理後の放置時間が長い方が菌の減少効果が大きかったが、処理後24 時間放置したスポンジにも菌は残っており、菌数はゼロにはならなかった。

3)製造業者へのアンケート調査結果によると、「スポンジ除菌」の表示がある洗剤は、「除 菌成分を添加している」、「除菌効果を高めるための配合をしている」という回答であった。


当時このレポートのマスコミでの取り上げ方はセンセーショナルでしたね。
化粧品犬も「除菌物って大して効果無いんだな」という印象を持ってました。また、「洗い流される効果」で菌が居なくなるのかな・・・とぼんやり思っていました。

でも良く資料を見ると、違ってましたね。先に挙げた後半の資料でも、書き方によっては、
「10品のうち3品の台所用洗剤は、スポンジの菌を10の5乗以上減少させた」
となるわけです。
またレポートを良く読むと分かるのですが、10の5乗までには至っていませんが、10の4乗減少させた製品と言う事になると、10品のうち5品の台所用洗剤が10の4乗減少をクリアしていました
そもそも「殺菌能力の試験をした」と書いてあるように、この菌の減少を見る試験法は菌が洗い促されるとかでは無く、「殺菌」とか「滅菌」を評価する試験です。菌の発育阻止なんて生やさしい物では無く、台所用洗剤が消毒用エタノールや殺菌剤のように菌消滅させたと言うことを評価しています(^_^;)
考えてみれば、これはすごいことです。
また、殺菌能力として「菌数を10の5乗以上減少させる能力」となってますけど、これだけあれば充分ですね。
化粧品に菌が生えて白いコロニーが見える状態って菌が10の5乗から10の8乗ぐらいの菌数なので、ここから10の5乗減菌されると
残りは0~10の3乗位の菌数となるわけで。この0~10の3乗位の菌数だと、ちょうど化粧品の生産基準ぐらいなので、工場生産品が可能なレベルです(^_^;)

この東京都のレポートで業界が動きまして。
2005年に各種基準やら試験法のl共通化、適合マークの制定などが行われたのですね。
台所用・住居用洗剤の除菌標記について 日本石鹸洗剤工業会(最終更新2006年12月)
http://jsda.org/w/01_katud/a_seminar061121_2.html

この基準、最終的には、だいぶ甘い基準になったのが残念ではあります。
気になるポイントは、以下です。
1)減るのは細菌だけで、真菌(カビや酵母のこと)は減らなくて良い
2)細菌は、黄色ブドウ球菌、大腸菌の2菌種とする
3)菌数が10の2乗減れば、除菌できたと表示して良い
4)スポンジの除菌の場合は、18時間後に測定する


だいぶ骨抜きになってますね(^_^;)
せめて最低でも、試験の基準菌として緑膿菌は入れろよ、という感じです(^_^;)
(最初の都に試験では、黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌の3菌で試験をしている)
試験をしても、「すべての菌を除菌する訳ではありません」の表記が必要なのですが、そりゃそうですよね。
またヨーロッパの殺菌作用の基準が「10の5乗以上減少させる」にたいして、先員で無く除菌とは言え、「菌数が10の2乗減れば、除菌できたと表示して良い」というのは、甘過ぎな気がします。

評価できるのは、4)スポンジの除菌の場合は、18時間後に測定するぐらいかな。これは2003年の都の試験では24時間後だったので少し短かくなってます。

まあヨーロッパの試験法より甘くなったけど、標準化されたことに意味があります・・・かね。
P&Gはアメリカの会社でヨーロッパではないのですが、ヨーロッパに近いP&Gのジョイの方が除菌機能では優れてそうな気がしますね。

次回は、除菌ジョイの処方内容を見ていこうと思います。