P&G 新パンテーン エクストラダメージケア シャンプー/コンディショナーの解析2 シャンプー解 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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大手会社の開発に勤務していましたが、好きな化粧品を好きなだけ追求するため円満退職。
ノラ犬となった化粧品犬が、面白いと思った情報を発信していくブログです。
化粧品コンサルタントとして仕事も受けています。
パームアミノ・ラボ合同会社 imori@palmamino-labo.jp

化粧品犬です。

今回は、P&G さんの新しいパンテーンのエクストラダメージケア の解析第2回として、シャンプーの解析編を送りいます。

最近のノンシリコンというトレンドに真っ向から反論し(?)、シリコン入りの使用感の良さを追求したこのシャンプー。
しかし、成分的には何故こんな問題のある原料を使っているの?という処方でもあります。
その辺りに迫るのが今回のエントリーになります。

商品の概要は前のエントリーの概要編を見ていただくとして。
一応商品写真をアップします。200gのボトルです。

今回の商品のポイントとしては、塩基性アミノ酸の一種であるヒスチジン配合により、髪に蓄積したミネラル分(銅イオン)を洗い出して、学生の頃のバージンヘアをとり戻すってなってます。
これに対しては前のエントリーで、酸で銅イオンを溶かし出すのはあり得ても、ヒスチジンのよう弱塩基(弱アルカリ)では、銅イオンは溶かせないと思うのですが・・・なんてことを書きました(^_^;)

では早速裏面を見て、処方の整理をしてみましょう。
こんな感じです。


●処方全体について
全体的に、処方を低刺激にするという考えが薄いです。
例えば、現在はラウレス硫酸でも問題視される事が多いのに、前世代の洗浄剤である、ラウリル硫酸を使ってますね。
昔は世の中でもラウリル硫酸を使っていたのですが、安全性を向上させるために、あえて泡立ちを悪くして開発されたのがラウレス硫酸やα-オレフィンスルホン酸(ジュレームなどに使われている)なのですが。
時代を巻き戻したかのようです(^_^;)
さらにキシレンスルホン酸配合って!これって床用の洗剤とかに入っているヤツじゃないですか。
あと花王のハイターとかカビ用ハイターとかに入っている(^_^;)
人用の洗浄時剤とかけ離れた使用例しか無いので、どのくらい刺激が強いか逆に分かりません(^_^;)
化粧品犬はけっこう色々な洗浄剤の刺激性評価をやってきたのですが、人への使用を想定したことが無いので、評価の俎上に上がったとが無いですね(^_^;)
しかもベースがキシレンですから。
キシレンのSDS(安全性データシート)をみると、キシレンはろくでもないですね。
皮膚刺激性あるとか全身毒性あるとかは良いのですが(良くは無いけど)、特に生殖毒性あり(生殖能又は胎児への悪影響のおそれあり)というのが最悪です。
キシレンのSDS(安全性データシート)
http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/24010150.pdf

このよう洗浄力が強く、泡立ちが良い洗浄剤を配合してる理由は、たぶん配合されているシリコンやオイルで泡立ちが低下する分を補う為だと思います。
性能の追求のためには、いろいと配慮が無くなっても仕方が無いという割り切った考えで作られている処方のようですね。

また防腐剤にも、刺激の強いメチルクロロイソチアゾリノン、 メチルイソチアゾリノン使用とか・・・。
とりあえず、使うときには目に入れないように。
目をぎゅっ、とつぶって使った方が良いですね(^_^;)

●各成分について
後は簡単に各成分を見ていきます。
まず洗浄剤から見ていきましょう。

多い方から、ラウレス硫酸アンモニウム 、ラウロアンホ酢酸Na 、コカミドプロピルベタインですね。これはラウレス硫酸に比較的刺激の低い2種類の両性を加えるという、よく使われるベースです。
しかし次のラウリル硫酸は、過去によく使われた刺激の高い洗浄剤。
ラウレス硫酸が石油系で刺激が強いと言われることがありますが、ラウレス硫酸は実は刺激が低めです。それはたぶんラウリル硫酸と混同していると思われます。

コカミドMEAは汎用的な増泡、増粘剤。

キシレンスルホン酸は前述しましたが、床用等に使われている洗浄力の高い洗剤です。ベースのもキシレンというのが恐ろしい。

次は、コンディショニング剤、 オイル類を見てみます。
ジステアリン酸グリコールはパール化剤として使用されている固形油。

次からの、セタノール 、ジメチコン、 水添ポリデセンの3成分は、このシャンプーを特徴付けている油性成分ですね。
セタノールは、リンスに使われているワックス成分。
水添ポリデセンは、石油を精製して作られたオイルで、使用感はスクワランに似た軽い油です。これもどちらかというとリンスに使われるものですね。
ジメチコンはシリコンのことです。

ポリクオタニウム-10はシャンプーによく使われているコンディショニング剤で、カチオン化セルロースともいいます。

次は防腐剤のパートです。
安息香酸Naはよく使われている防腐剤なのでやむ無しとして。
問題なのは、刺激の強い メチルクロロイソチアゾリノン とメチルイソチアゾリノンを何故使うのかと言うことです。
以前のエントリーでも書きましたが、刺激のレベルが違うし、大手会社がこれを使って、環境に大量に排出されるのもどうかと思います。

次は増粘剤、 保湿剤、 香料類等のパート。
ここは気になる原料だけピックアップして解説します。

まずエチレンジアミンジコハク酸3Naですね。
これは、2013年リニューアル時に「ダメージブロッカー」として導入された成分です。
機構としては今回のヒスチジンと似ていて、水に含まれる銅イオンと選択的に引き付け、髪への蓄積を防ぐというものです。そもそも銅イオンが、髪に吸着するのを防ぐ訳です。
まあキレート剤は、だいたいそういう効果がある物で(^_^;)
効果の大小はあるのですが、あり得る効果です。

今回のヒスチジンは、ちょっと違いますよね。髪に吸着「後」の銅イオンを、髪から引きはがすと(^_^;)
それはヒスチジンのような弱アルカリでは、無理じゃ無いかなと思うんです。ヒスチジンは所詮アミノ酸なので、アルカリ性は弱いんです。苛性ソーダのような、髪の毛が溶けそうな強アルカリなら有りえるかもしれませんが。

次はパンテノール とパンテニルエチル。
パンテノールは体内でビタミンB5になる成分で、プロビタミンとも呼ばれる、商品お名前の由来ともなった原料ですね。
パンテニルエチルはパンテノールをベースに更に安定性を高めた原料です。
効果は、抗炎症作用、血行促進作用、保湿作用、肌再生促進作用、そして育毛促進作用などです。

アミノ酸は前述のヒスチジンの他、リシンHCl と塩酸L-メチルチロシンが「配合されてます。
リシンHClは、アルギニン、ヒスチジンと並ぶ塩基性アミノ酸ですね。
この三つのアミノ酸は塩基性アミノ酸と呼ばれ、髪に吸着する効果が特に強いことで知られています。
アルギニンはリーバのラックスに配合されているせいか、パンテーンにはヒスチジンとリシンが配合されています。
敢えて住み分けているのかな?

塩酸L-メチルチロシンは、これも変わった成分です。チロシンは髪の毛の黒さの元になるアミノ酸ですね。
チロシンは溶けにくいため単独では配合しにくいのですが、メチル化し塩酸塩にして塩酸L-メチルチロシンにすることで、水に溶けやすくなり処方に配合できるようになっています。
これも育毛的に効果があると言われていますね。

長くなりましたが、これでシャンプー解析は終了です。

本文でも書きましたが、このシャンプーは、使うときはぎゅっと目を閉じて使うべき(^_^;)
ちなみに化粧品犬家では、使用感を見るために小学校六年の娘に使ってもらっているのですが、「目に入るとすごく痛い」と言ってました。
大丈夫か、娘よ(^_^;)

また、頭皮が痒くなったらすぐ使用を止めるべきでしょう。

今回は以上です。