立山一郎さんの新刊、PRAGA 2018 に参加して感じたこと | 郵便・切手から 時代を読み解く

郵便・切手から 時代を読み解く

切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

欧州出張から戻りましたら、尊敬する立山一郎さんから新著『明治前期の大阪肥後航路と汽船便』をご恵贈頂いておりました。

 

郵便逓送スピードの変遷を調べることをライフワークとしている私にとりましては、非常に興味深い内容で、膨大なデータを一つ一つ拾い出さなければなし得ない、たいへんな労作であることには直ぐに気付きましたが、それをここまで纏め上げられた著者の執念に、いたく感銘を受けた次第です。

(表紙)

 

(同一差出人・受取人相互間の書状<明治12年>で書留書状<海路逓送>と書留別配達書状<陸路逓送>の同時期使用例比較の頁。配達局から先しか急速扱いとならない別配達のほうが長い逓送時間を要した興味深い比較)

 

立山さんは、現役時代は金融界で成功を収められた大先輩で、既に齢75歳となられましたが、その旺盛な知的好奇心と行動力には唯々驚嘆するばかりです。今後も益々お元気でご活躍頂きたいと願っています。

 

さて、今般のプラハ展も例外なくそうでしたが、先進国が一様に高齢化の一途を辿っているのですから、経済的に安定しておらずフィラテリーどころではない途上国は対象外とせざるをえないという現実をみれば、世界中の郵趣界が高齢化するのも当然のことです。

 

それでもプラハ展の会場内には元気にフィラテリーに勤しむ高齢者の皆さんがたくさんおられて、まさに世代を超えた活動であることを実感させられた次第です。

 

こうした状況を踏まえると、世界一の長寿国であるわが国において、「持続可能性(30年後の郵趣人口)の確保」という課題をクリアするには、単に「若い世代に訴求する」というワンパターンだけではどうにもならないことが、ますます顕著になってきました。

 

むしろ、「人生100年時代」となり、サラリーマンの定年も65歳に延びようとしているのですから、「還暦になって公私ともに余裕ができたときにフィラテリーの世界に入ってきてもらい、以降、健康長寿の続く限り、少なくとも20-30年は活動していただく」というモデルを確立することが必要だと、今回の欧州出張を経て確信したところです。

 

無論、10代のユースから後期高齢者まで、世代間のバランスがとれていることが最良であることは言うまでもありませんが、現実を見据えれば、フィラテリーは高齢者が多数を占める活動であることをある程度認めつつ、前期高齢者から後期高齢者までが数十年にわたって、その活動を満喫し、交流し、コレクションを他者に円滑に継承できるフィラテリー環境の創出を志向したほうがより現実的だと思われます。

 

このモデルを確立するには、(1)出来るだけ参入の妨げとなる要素を取り除くことと、(2)促進するための材料を増強すること、の2点が必要なことはいうまでもありませんが、青少年育成とは異なり、既に人格・識見が確立した成人が対象となりますので、フィラテリーという活動の特性に適合した方だけを呼び込むこと、つまりはターゲットを絞って取り組むことが肝要かと思います。

 

すなわち、人生の円熟期を迎えた時点において、まずもって心身が健やかであることは当然として、「小さな紙片を慎重に取り扱うことが出来ない人、頭を使う活動や書籍やネットで調べ物をすることが嫌い(若しくはそれを円滑に行う教養を備えていない)人、論理的思考ができない人、ホビーを通じた人的交流やコミュニケーションをとることを苦痛に感じる人」を対象にしても仕方がありませんので、訴求方法は自ずと従来以上に「狭く・深く」なるのではないでしょうか。

 

それにしても、日本でもお元気なフィラテリストの皆さんみていると、われわれ以上に熱意と行動力がある方が少なくないですし、例外はあるにせよ、フィラテリストで認知症になられる方が少ないように感じられるのは気のせいでしょうか。

 

さてこの週末は、ヨーロッパから戻り、時差調整も儘ならぬうちに、この間の仕事の処理でバタバタしており、楽しみにしていた大阪でのオークション参加は叶いませんでした。若い頃は、無理をしてでも出かけたのですが、流石にアラフィフになると、体調回復も遅れがちなので、安全第一ということにならざるを得ません。

 

ジャパン・オークションの結果が気に掛かるところですが、それは横において、今日までに9月のマカオ国際展参加のためのフライト確定やら、宿泊手配やらを一挙に済ませました。今年は11月末にバンコクFIP展もありますので、このまま慌ただしく年末になりそうで少々怖いなと思っているところです。