このところ、映画やアニメなどの劇伴BGMが、昔に比べて随分、様変わり
して来ました。

それにともなって、サウンドトラックのCDソフトの売れ行きも
激減しました。

作品によっては、もはや発売もされない事もあります。


もちろん、そう言う現象になったのは
音楽業界全体の抱える問題(ネットの急速な進歩)などにも
原因があるので、一概には言えませんけど、
ユーザーが望む楽曲の提供が、BGM曲においては出来ていないのではないか?
と、考えられます。


昔の映画音楽には、本当に素敵なテーマ曲が、それこそ山の様にありました。

思い出すだけでクラクラするほどの名曲の嵐。

昔のハリウッドの映画などは、テーマ曲の多くがインストロメンタル曲。
歌の入っている歌曲のテーマは、その割合が低めでしたが
その中にも名曲はキラ星のごとくありました。

それが、あちらの世界でも、タイアップらしきものが氾濫し始めて
大体が最後にエンディングテーマとして流れるタイアップ曲が
その映画を代表する楽曲と認知されるようになりました。


それにともなって、BGMは、今までの素敵なメロディー重視の楽曲から
リズム重視へと変わりました。


今では、映画の印象的なメロディーのインストの楽曲など
ほとんど皆無、と言っても良い状況です。

思い出して下さい、
この数年の映画音楽の心に残っているインストのメロディーを。

昔の曲なら、いくらでも思い出せます。
『ニューシネマパラダイス』
『ゴットファーザー』
『スターウォーズ』、、、、、などなど。


そして、もう一つは曲作りにおいての『ループ』重視です。

この『ループ』と言うのは、一定のリズムパターンの事です。

このところの戦闘シーンやアクションシーンのバックで流れている
太鼓やリズムがドンドカ鳴りまくって、感情を煽るあの激しいリズムの曲。


一回この『ループ』の定型を作ってしまったら、
少しづつ変化を付ければ、それこそ戦闘シーンなら何時間でも手間ひま要らずに
続ける事が出来ます。


BGM作曲家にとっては、手間が少なくてどんどん量産出来る夢のツール。
しかも、予算は凄く少なくて済みます。
だから多用したくなります。


もう一つは『アンビエント系』音楽。

かつて、ブライアン・イーノが起こした環境音楽と言うジャンルの曲。

これは雰囲気重視の曲なので、メロディーはかえって邪魔。
独特のコード感が大事。

このジャンルの曲も、BGMの『会話のバック』などに
凄く使い勝手が良いので多用されるようになりました。


つまり、もし今、映画のサントラを買ったら
その中身は、タイアップの歌の曲と
『ループ』と『アンビエント』に埋め尽くされた
魅力的なメロディーのほとんどないインストの曲の嵐に
なってしまうと言う事。

異論はあるでしょうけど、このようなCDには
高いお金を出して購入するほどの魅力が
あるのでしょうか?


もう、映画で聴いたから十分、と思われてしまって
わざわざサントラまで、手が回らない事が容易に想像出来ます。
(だって、生粋のサントラファンの私がそうなんですもの)



私は、そんな事実も傾向も良く理解した上で
映画館を出た時に知らず知らずに口ずさんでいる
『耳に残るBGM』
を、何とか一曲だけでも提供したい!と、思っています。

もちろん『ループ』や『アンビエント』の必要性は意識していますけど
もの凄く物理的に手間がかかり、また制作費も膨大なオーケストラの曲も
絶対にやり続けて行きたいのです。

その中で、どれだけ魅力的なメロディーを持つ『インストのBGM』を
書く事が出来るか?を最重視しているのです。


それが、サントラと言う文化を守る一つの方法である、
と、信じているからなのです。