私が曲解説をやる際に、
その曲の特長を表しているテクニック『転調』について
多くの時間を割く事が良くあります。

他にもその曲が優れている点がたくさんあるのですが(構成や展開など)
私は『転調』のテクニックが最も好きなのです。

それも『美しい転調』が。

もしかしたら『転調オタ』かもしれない。


私が曲を書く際も、必ずどこかの箇所で
この『美しい転調』を入れたい!
と思って作曲する事が多い。



では、『美しい転調』とは何か?


日本の流行歌(Jポップ、アニソン、演歌も含む)のカテゴリーは、
今まで常に保守的でした。

昔昔は、曲中に転調など御法度で、
転調してもせいぜい同主調転調など、簡単で分かり易いものに
終始していました。


しかし、その時代でも欧米のポップスやjazzを聴くと、
もの凄くエレガントで『美しい転調』の嵐!


一度聴いただけでは、
何をどうやってどのキーに展開しているのか分からない。
でも、凄く美しい。



まず
#普通の人にはその真髄がすぐには分からないほど自然な転調である。
(いかにも今、転調しましたぁ~って言うのは下品である)

そして
#ユニークなコード展開によって気持ち良い”変化”が生み出され。

そしてこれが肝心
#最後には”必ず”最初のキーに戻って来る。


そうなんです、『転調』は学問でもあり芸術でもあるのです。

転調の苦手な人の作品は、わざとらしく転調して、そこに違和感が残り、
使い古されたコード展開で正体がすぐにバレて、
転調したのは良いけど、行きっきりで元のキーに戻す事すら出来ず、
しょうがなく間奏でAメロのキーに戻す。

こんな感じになります。



じゃぁ、なぜ転調が必要なのでしょうか?

まず一つには、

本当に美しいメロなら、それほど転調は必要ではないのですが
古今東西、何100年も前から、
ドレミファソラシドの7音だけで作られて来たメロなので
どんなメロでもどこかの誰かがすでに作っているに違いないので
もはや、オリジナリティーなどと言うものは存在しないのかもしれない。

そして、聴き手が保守的なので12音を含む、
それ以上に難解な方向にメロディーは
進む事は出来ない。(リズムの進歩は除く)


唯一、その打開の手だてとして『転調』があるのです。
曲自体に変化を付けて、色を変えるためにも。

そしてそれも、聴いて心地よい『美しい転調』が必要なのです。


そしてもう一つ、

プロの矜持です。

今や、機材の進歩やバンドブームもあって、
アマチュアの方々も気軽に作曲をされるようになりました。

当然、そう言う方々の音楽も世間に発表されて行きます。

音楽経験度の高くないそのような方々の書く曲は、
素直で何も迷いも無いものが多い。
正に恐いもの知らず!とでも言いましょうか。


ただ、我々プロはそんな所で勝負する事は出来ない。

プロならでは、の曲を作る必要があります。
プロしか書けない曲を。

そうでなければ我々の存在意義がない事になる。

その一つのテクとして『美しい転調』があるのです。

これは、勉強しても一朝一夕で出来るものではありません。
研鑽に研鑽を積み重ねて、メロディーセンスを磨きに磨いて
やっと取得出来るものです。



試しに私の曲を聴いてみて下さい。

『美しい転調』のテクをふんだんに取り入れている作品と、
全く転調しないでアマの方々と同じ土俵で勝負している曲と
2種類あるはずです。

それは、全て意図的です。

それぞれに色々な意味があるのです。



そう考えてみると、昔聴いた欧米の楽曲の『美しい転調』は
名だたるプロの作曲家さんの矜持だったんですね。


今後もそんな巨匠の方々を目指し、彼らに一歩でも近づきたい!
と、思っています。