今回の創作者の皆さんは、特にこの世界を目指している若者にメッセージを
送りたいと思います。


我々のようなベテランは、若者には絶対に勝てません。
パワーがあって、新しいアイデアに溢れていて、なにより流行に敏感です。
この世の中を変えて行くのは、いつも若者の力です。

普通に戦ったら、やはりそのパワーに圧倒されてしまします。



それなら我々ベテランは、若者に対抗していくのにどのようなスキルを持っているのでしょう。

すぐにお分かりになる事は、『経験』と『人脈』ですか。
それだけなら分かり易いですね。

「あの人、長くやってるから、コネとか人を良く知ってるから仕事があるんだよ」
良く聞く言葉です。

じゃあ、長くやれば誰でもそこまでは行くと言う事になります。
簡単ですよね。

人との付き合いが多ければ多いほど、仕事が多い。


そうでしょうか?

そんなに単純ではなく、
長くフリーでやる事は容易な事ではありません。


それは、人脈があると少しは有利にはなりますが、
私の場合で言うと、私はつい最近までプライベートでお仕事関係の方々と
飲みに行ったりする事が極端に少なかったのです。

そのような『夜の人脈』は皆無!と言っても過言ではありませんでした。

人脈でお仕事を取るやり方を知らなかっただけなのですが、
今までの大半のオファーは、
「田中公平と仕事がしたい」と、クライアント側lから思っていただいた結果なのです。

反ってそんな人脈オファーだと、それに縛られてしまう事になりかねない。

私の音楽を認めてくれる純粋なオファーの方が清々しいです。




これは自分が認知された後の話です。

世間に自分の名前を認知してもらう方法については、ここでは書きませんが
著名な方々すべて、そこは苦労して結果を出しておられます。



そして、その認知された後が大変なのです、勝負なのです。


世の中と言うものは、非常に(非情に)正直で、一番注目してくれるのは
『新しい才能』です。
それこそ鵜の目鷹の目で探しています。
(ここは若者には勝てない)


そしてもう一つは『ずば抜けた個性』です。


最後に『プロフェッショナル』です。


つまり、我々ベテランに望まれているのは、最後の2つ。
『個性』と『プロの仕事』なのです。


ここなら、センスとパワー勝負の若者にも、十分対抗して行けます。


で、なぜ世間は”非情”と書いたかと言うと、
たとえば作曲家で言うと、プロのクライアントが誰かの音楽を『ひと聴き』するだけで
その人の『才能』や『正体』がバレてしまうから。

と言うか、勝手にランク付けされてしまうから。

そして一度「あいつはダメだ」のレッテルを貼られてしまうと
それを覆すのに、もの凄い時間と労力が必要なのです。



最初に戻って、この文章はアーティストを目指している若者のためのメッセージ
だと書きましたね。

それは、少しでも優秀な若者が、才能があるのに早くして潰されて欲しくないから
なのです。


あまりにも、そう言う若者が多かったから。
早くに『レッテル』を貼られてしまったから。



では、私の考えを書きます。

一番大切なのは『デビューを焦らない』事です。


デビューしてしまうと、世の中の全てのアーティストと同じ土俵に立つ
『ガチンコ勝負』の場に行く、と言う事です。

『ずば抜けた個性』も乏しく、『プロ』に対抗出来るスキルも十分に勉強しないでは、
『新しいアイデア』と『パワー』だけで生き抜いていけるほど甘くはなく、
すぐに『レッテル』を貼られて、長くは続けられない事態になります。


デビューアルバムを発売しただけで、消えて行く才能あるアーティストが
どれほどいた事か!


ですので、若者の皆さん、
焦らずに、もうどこから何を言われても大丈夫!と思えるくらいの『勉強』をして
自分だけの『個性』を磨いて、大黒様の袋みたいに凄い量の『スキル』を蓄えた
と思ってから、仕事をしましょう。

なにしろ、走りながらそれをするのは、とても難しいですから。


一度アーティストを目指したなら、長く、それこそ一生やり続けたいものですからね。