結論から書きます。

神様は降りてきません!以上


身も蓋もない書き方ですみません。
本当にそうなのですもの。

昔々の、今ほど音楽を作曲する方が多くなかった時代には、
「お風呂で鼻歌を歌っている間に出来ちゃったよ」
とか言う話は良く聞きましたが、今は無理ですね。

古今東西この何十年かで何万曲もの作曲がされ、それだけ
曲が増えて行っている時代に、
たかがドレミファソラシの7音しかない中で、自分なりの
オリジナリティーを模索する事が、極めて大変な事に
気がついた瞬間、お風呂の鼻歌を世間に自分の曲として
発表する事が、どれだけ危険なのか、
分かってしまうからです。

絶対そんな曲は、先に誰かが作曲しているのに
違いありません。確率100%です。


ビートルズのポールは「Yesterday」が出来た時に、
あまりに完璧なメロディーなので、これはどこかで聴いた曲が
無意識に自分から出て来たものか?と疑って、人を何人か
使って過去に似た曲がないかどうか、調べさせたそうです。

その結果、ない!と言う事が分かり、無事に発表出来たらしいです。

私にも、神様が降りて来た!と思った瞬間があります。
でも、たいてい錯覚でした。
それだけ、親しみやすいメロというものは、まあはっきり言って
しまえば、作曲家でなくても誰でも思いつくのです。

それだけ、ユーザーさんのレベルも上がっていて、音楽機器も
進化して、家でも結構なサウンド作りが出来てしまう環境に
なった事も大きな要因でもありますが。

だから、私は神様が降りて来たと思った時は”罠!”だと
思うようにしています。

それは、神様からのプレゼントでもなんでもなく、自分の
潜在意識にいつのまにか記憶されていたものが、
偶然出て来ただけにすぎない、事が多いからです。

どこかで聴いた曲を自分のものと錯覚している状態です。

私は、プロたるもの、潜在意識ではなく、出来るだけ
顕在意識で仕事をするべきだと思います。

でも、これにも限りがあります。
発表される曲すべてを聴いて、これを記憶するなんて、
不可能です。
ましてや、そんな事をすると、もう曲は書けなくなります。
7音しかないのですから、どうしても何かの曲に似てしまいます。


 これを踏まえて、作曲家はどうすれば、自分だけの
オリジナルを出す事が出来るのでしょうか?

メロだけではなく、サウンド全体で勝負するのも一つの
やり方ですね。
こうすれば、どこか聴いた事のあるメロも、サウンドの行方に
よっては、全く印象が違ってきます。

転調や、変わったスケールの使用など、作曲法を駆使する事に
よって、従来とは違う曲作りをするのも、手でしょう。

私は抽象的な言い方になりますが、「誰よりも太いメロ!を書く」
と決めています。
それが私のオリジナルだし、それでしか勝負出来ないからですが。 

その結果、
昔より、もの凄く頭を使わなければならなくなりました。
ただ一曲に向き合う時間が、圧倒的に昔より長くなりました。

でも、こんな事を日々過ごして行くうちに、出来上がるか、
そうでないかギリギリまで粘ったあげく、
ドロドロになった自分に、少しだけ一筋の光がさす瞬間が
あります。

この時出来たメロは私は信用する事にしています。

自分だけのオリジナルかどうか調べようもないけれど、
自分で出来るだけやって、これ以上は出来ない時に
ひらめいたアイデアですから、これを信用出来ないと、
もう、自分を信じない事になってしまうから。

「人事を尽くして天命を待つ」

そう言う意味においては、神様からの少しのヒント
なのかも知れませんね。

神様は降りては来ないけれど、一生懸命に頑張った人には、
少しだけヒントをくれる。


 どの世界でも同じですね。