不定期連載「蟹さんと読む韓国経済」 第2章住宅・不動産問題 その1 | Korea Economic News by KANI

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ミ( ゚w゚)彡 <貯蓄銀行の章は前回で終了し、第2章では住宅問題を取り上げます。


「蟹さんと読む韓国経済」
 第2章 住宅問題


1.独特の賃貸住宅傳貰(チョンセ)

 最近では都市部を中心に減少する傾向にあるが、韓国独特の賃貸制度である傳貰(チョンセ)が今も主流になっている。傳貰とは、入居者が保証金を家主に預けることで一定期間(2年が多い)不動産を賃貸できるシステムで、それ以外に家賃などを支払う必要はない。期間終了後に退去する場合には家主から保証金全額が返還される。家主は預かった保証金を運用して収益を得ることになっている。また契約を更新して賃貸を続ける場合には、不動産相場などを考慮して保証金額の見直しが行われる。
 傳貰物件の家主は預かった保証金を運用して収益を得るわけだが、運用に失敗して保証金を返せなくなることも起きる。このような時には引越ししようとする入居者に対して、保証金を返して欲しかったら、次の入居者を探して来いと強い態度に出ることもあるが、やっと探し出してきた新入居者が差し出した保証金は、家主の目の前を通り過ぎるだけで懐に入らず、そのまま旧入居者に手渡されるという悲喜劇も、引越しシーズンの風物詩であったという。ここまでは笑い話だが、運が悪ければ物件を売却して保証金を返すこともある。もっとも、満額ではないものの少額の保険料で保証金を保護する公的制度もあり、ここまでは入居者にとっても悪い話ではないように思える。

 しかし傳貰では毎月の家賃がないかわりに保証金は高く、物件の売買価格の3割から5割前後が相場とされている。ソウル市では2011年のアパート平均保証金額は2億5千万ウォンを超えていて、若いサラリーマンなどは保証金を用意するために大変な苦労をしている。
 もちろん金融機関もそこは心得ていて、傳貰住宅ローンを用意している。こうした韓国の賃貸住宅制度を知らないと理解に苦しむことになるが、簡単に言えば住宅を借りる目的の住宅ローンであって、賃貸用住宅を購入しようとする家主向けのローンではない。

 気づかれただろうか、この傳貰という制度は、好景気が続いていれば順調に賃貸住宅を供給できるのだが、その前提が崩れると途端に苦しくなる制度なのだ。
 家主の立場では、高金利が続いて株式投資などでも利益が出ていれば良いのだが、景気が低迷して金利や株価が下がると利益を出すことが難しくなってくる。さらに運用益がマイナスになった場合、保証金返還のために物件を売却しようとしてもままならず、泣く泣く値下げしてやっと売れたとしても、保証金を返せば手元に残る資金はごくわずか。ということも考えられる。
 入居者としても、少々無理な借金をして傳貰に入居しても所得は年々上昇していたし、住宅はあちこちで建設されていたために、家主側も競争を意識して極端に保証金を釣り上げることも無かった。

 2011年、ソウルを中心とする首都圏では景気低迷の影響を受けて、傳貰保証金が急上昇する傳貰難が起きた。普通なら景気が落ち込めば賃貸相場も下がりそうなものだが、これは傳貰を中心としてきた韓国の住宅制度の矛盾が一気に噴き出した現象だ。
 マイホーム指向が高い日本と違い、韓国では個人が住宅を買って賃貸に出したり、値上がりしていれば転売で利益を得ようとする傾向が非常に強い。韓国人にとって住宅は夢のマイホームでも終の棲家でもなく、身近な財テクの一つなのだ。その結果、景気低迷が長引くにつれて住宅価格が値下がりを始めると、将来さらに値下がりするのではないかという心理が働いて、分譲物件の購入に消極的になり、今の家に住み続けようと考える傾向が生じてくる。



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