医療崩壊を食い止める!超党派議員連盟発足
医療崩壊を食い止める!超党派議員連盟発足
大臣経験者含め9人が発起人、12日に設立総会
医療の現場の声が、政治の場にダイレクトに届きやすくなるかもしれない。自民党、公明党、民主党の国会議員が発起人となり、超党派の議員連盟「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」が、2月12日に発足する。与党・野党問わず全国会議員に呼びかけて賛同者を募り、現場の意見を反映した政策立案を進めていく予定だ。
発起人となった9人の議員は以下の通り。元厚生労働大臣の尾辻議員や坂口議員、安倍内閣で官房長官を務めた塩崎議員など、実力派の議員が名を連ねる。
尾辻秀久 自民党参議院議員(代表)
塩崎恭久 自民党衆議院議員
世耕弘成 自民党参議院議員
萩生田光一自民党衆議院議員
千谷由人 民主党衆議院議員
鈴木寛 民主党参議院議員
足立信也 民主党参議院議員
坂口力 公明党衆議院議員
西田実仁 公明党参議院議員
また、日本医学会会長の高久史麿氏、および国立がんセンター中央病院院長の土屋了介氏が、「医療顧問」として協力する。
超党派の議員連盟は、政府や与党だけでは解決できない問題に対処するために発足することが多い。現在の医療が抱える問題は、まさに厚労省や政府だけでは解決しきれないもの。同議員連盟の活動には、医療者からの注目が集まりそうだ。
以下、同議員連盟幹事長の鈴木寛氏へのインタビュー。
「このままでは、事故調案は『たらい回し促進法案』になる」と話す鈴木寛議員。
──設立の目的は
鈴木 医療現場が直面している崩壊の危機は、厚労省に問題を押し付けているだけでは解決しません。医療提供体制の再構築を図り、国民の生命と健康を守ることを目指します。
──今の医療においてどのような点が問題と
鈴木 2つあります。1つ目は、医療の現場の意見が永田町に届いていないこと。厚労省というフィルターを通し、バイアスのかかった情報で議員が政策を決めてはなりません。政府は昨年、医師が偏在しているだけで数は足りていると主張していましたが、あれなど最たるものです。私には昔から医師の友人が多く、個人的に色々な病院に出向いてダイレクトに話を聞いていますが、現場の意見と厚労省の言い分には大きな開きがあることを実感しています。
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鈴木 2つ目は、省庁や政党の枠組みを超えた視点で政策立案をする必要があるという点です。医師の増員ひとつ取ってみても、財務省、文科省、総務省がからんできます。医師の労働環境では厚労省の厚生部門、労働部門両方に働きかけが必要だし、医師の訴訟リスク低減のためには法務省とのやりとりが必要です。こんな複雑な状況では、議員がイニシアティブを取ってやるしか活路は見出せません。1省庁がやるのでは限界があります。
──なぜ今のタイミングで
鈴木 一言でいえば、かなり大きな危機が目前に迫っているからです。まず、医療事故調査委員会が拙速に法案化されるのではと、現場からは大きな不安の声が聞こえてきます。また、産科や小児科など疲弊した現場の勤務医が、今年3月末に一斉に大量退職するとの話を耳にします。にもかかわらず、12月末の予算編成を見ていると、例えば勤務医対策に160億円ぽっちしか出ない。現場が劇的に変わることがないことが明らかだということが分かりました。このような状況では、厚労省に任せるのではなく、現場への応援団を政治レベルで作らないと、もう持たないと思ったからです。
──事故調案についてはどう思いますか
鈴木 現場を分かっていないと思います。特に救急の現場が影響大です。このままでは「たらい回し促進法案」になるでしょう。訴追を恐れて、誰も患者を診なくなります。仮に患者が死亡して事故調が入れば、医師の業務がストップし、救急指定病院としての機能が停止し、患者受け入れの困難さに拍車がかかる。私のところにも医師から「今の医療事故調法案が成立したら、現場から立ち去ります」などというメールが来ています。大幅に内容を変えないとダメだと思っています。
──医療者側に立つ格好になると、選挙で票を失うという懸念はありませんか
鈴木 当初はそういう風に、主権者の理解が得られないこともあるかもしれません。しかし、私たちが言う「医療現場」とは、医師も患者も両方とも含みます。医師の問題は患者の問題です。救急患者の「たらい回し」で困るのは患者。お産難民で困るのも患者。医療者が困っていて患者が喜ぶことはありません。患者のためであると、間違ったことはしていないときちんと主張すれば、理解は得られると思います。
──具体的なこれからの活動や策については
鈴木 まずは、最善を尽くした医師に対する訴追リスクを何とかしたい。厚労省にはどんどん意見を言っていくつもりです。また、医師の勤務体系を根本的に見直すことも考えています。例えば、国立病院で医師が正規雇用されていないという実態、大学院生の医師が無給で診療行為を行わなければならない状況などをなんとかしたい。
12日に設立総会を開催しますが、むやみに賛同者を多くしようとは思っていません。今後は法案作成のために医療者から広く意見を募集し、この議員連盟の名前の通り、現場との連携を密に取って行きたいと考えています。